【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

148針 ページ6

谷崎くんを与謝野さんに看てもらう。





「済みません乱歩さん……失敗しました。」




「まぁいいさ、マフィアの様子は？」




「首領を地下避難室に移送させているみたいです。」





『地下避難室か……厄介だな……。


彼処には忍び込めません。』





「正面から強行突破するしかないな。」





乱歩さんがすぐに返した。




「でも乱歩さん、先刻来た連絡では社長は「マフィアと戦うな」と。」





『……！？』






敦くんの言葉に私は密かに驚く。






社長命令であるのならば私達は今すぐにマフィアと戦うことを止めなければならない。




「全く……善いだろう。


お前達が一万年悩んで出す結論を予め教えてやる。」





ウィルス異能者を捕らえようとする敦くんの言葉に対して、乱歩さんは少し口調を厳しくして皆に向き合う。





「無理だ。敵は奸知の権化、奴が綿密に準備した罠を時間内で覆すのは不可能だ。」






乱歩さんは、はっきりと言い切った。



それはつまりマフィアと戦い森さんを殺すしかないということを示していた。






「とは云えこれは立派な命令違反だ。


だから参加するか否か自分で決めろ。」




大きく息を吸って吐く。



確かにここでマフィアと戦わなくては社長が死ぬ。




社長は今モンゴメリちゃんの異能空間に居る。
その事がマフィアに知られたら社員の家族や友人又は事務員を人質に取っていくだろう。





私は手を握りしめる。





「そうなれば探偵社と雖も膝を屈するしかない。」





乱歩さんの言葉はいつも以上に重みがあって、皆何も云えなかった。






「やります。」





最初に口を切ったのは谷崎くんだった。


谷崎くんにはナオミちゃんが居る。ナオミちゃんを人質に取られることは避けたいのだろう。



それに続き与謝野さん、鏡花ちゃん、賢治くんもマフィアと戦うことを決心した。




まだ意思を表示していないのは、私と敦くん、そして国木田さん……。




「国木田、お前は如何する？」




乱歩さんの問いに国木田さんは声を荒らげる。


社長の命令と自身の理想が相反しているせいで国木田さんは顔を青ざめさせ声も震えていた。





「国木田、お前は探偵社で最も高潔で毅い。

だから敵は最初にお前を壊そうとした。


それを忘れるな。」



乱歩さんは国木田さんの肩を叩いて荷台から降りる。


それに続いて与謝野さん、賢治くん、谷崎くん、鏡花ちゃんも降りていった。

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