155針 ページ14
横浜にあるビルの喫茶処のテラス席。
各々が会話や飲食を楽しむ中、紅茶を飲む一人の男−ドストエフスキー−は耳のイヤホンに手を当てる。
そのイヤホンから流れる曲はバッハの『マタイ受難曲』
「潮時ですね」
ドストエフスキーはそれだけ呟くと立ち上がって店の外へと足を進める。
「(密輸戦で一旦街を離れ…次の攻撃を発動しますか。
思ったより容易な相手でした…次手で焼却出来そうです)」
そこでドストエフスキーはなんとなく周りを見た。
その目がある一点をとらえると彼は大きく目を見開き動きが止まる。
「やァ、善い喫茶処だね」
『紅茶が美味しいですね』
ドストエフスキーの目線の先にはテーブルを囲んで座る太宰とAの姿。
「流石に驚いた顔だ。
何故此処が判ったのか、そう訊きたいのだろう?」
『実際…極限下の一手でしたよ。
しかし、かの″魔人″を欺くには並の手では足りないのは判っていました。
これが私の一手です』
太宰とAの間、新聞紙を持っていた手が下がって、強気な瞳が現れる。
「久しいな《鼠》」
組合元団長フィッツジェラルドは口角を緩やかに上げた。
「……あぁ素晴らしい。
″神の目″ですね…?」
『矢張り貴方も彼が″神の目″を持っていることを知っていたんですね』
ドストエフスキーの言葉に反応したAは彼と同じようにうっすらと笑みを浮かべた。
「街中の監視映像を統合する無謬の目、その力で此処を見付け出した。
君が潜窟に気を取られている隙にね」
『借りる条件は″貴方がたが掠め取った組合の隠し資産を取り戻す事″で手を打ってくれましたよ』
「手離れした金に興味はないが《鼠》に盗まれたままでは小癪でな」
フィッツジェラルドはコーヒーを呑みながら云う。
「……彼が″神の目″を持っていること、良くご存知でしたね」
ドストエフスキーはAに目を向けて柔らかい声音で云った。
『一度倒した相手のその後を調べるのは昔からの癖ですからね。
敦くんや龍之介くんか潜窟の中で大暴れしてるのに、潜窟から出てくるのは囮ばかり。
その時点で貴方が中にいないのは判りましたよ。
そこからはフィッツジェラルドに条件を持ち出し、″神の目″を借りて貴方を見つけ、治くんを乗せてバイクをとばしてここまで来ました。
貴方が去る前に間に合って良かった』
Aは頬杖を付いて笑いながら彼を見上げた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時