6針 ページ7
「きっと奴ですよ！
太宰さん、Aさん！」
『風で何かが落ちたんだよ』
「ひ、人食い虎だ……！
僕を食いに来たんだ」
「座りたまえよ敦君
虎はあんな処からは来ない」
一向に焦らない治くんと私に対して敦くんは声を荒らげる。
「ど、どうして判るんです！」
「そもそも変なんだよ敦君」
治くんは本を閉じる。
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい？
そもそも経営が傾いたんなら一人二人追放したところでどうにもならない
半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
「太宰さん、何を云って−」
敦くんは月を見ると動かなくなった。
私は入り口の近くから敦くんとある程度距離のある場所に移動した。
「君が街に来たのが２週間前
虎が街に現れたのも２週間前」
『そして鶴見川べりにいたのが４日前
同じ場所で虎が目撃されたのも４日前』
「【武装探偵社】は異能の力を持つ輩の寄り合いだ
巷間には知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。
その力で成功する者もいれば、力を制御できず身を滅ぼす者もいる。
大方施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう」
敦くんの体がギギギと嫌な音をたてる。
「君だけが解っていなかったのだよ。
君も[異能の者]だ。
現見に飢獣を降ろす月下の能力者」
私の考えは当たっていたわけだ。
尤も一番当たって欲しくないと思っていた考えだったが………
そこにいたのは気弱そうな少年ではなくなっていた。
体長はゆうに2mを超えそうな巨躯
真っ白な毛並みに黒い縞模様
ぎらついた目はあたりを見渡し私をその瞳に映すと
猛獣の咆哮を轟かせ飛び掛ってくる。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2017年2月3日 0時
