43針 ページ44
No side
Aと草田男が出会い半年ほどの年月が経った。
「お!」「ん?」「おや」
ポートマフィア参謀、中村草田男。
ポートマフィア幹部、尾崎紅葉。
ポートマフィア医者、森鴎外。
この3人がばったりと廊下で出くわした。
「なんじゃ、珍しいこともあるものじゃ。」
紅葉は袖で口元を隠しながらコロコロと笑う。
「いや、ほんと珍しいな。忙しい2人と会うなんて。」
草田男は腕を組みながら肩をすくめて笑う。
「おや、忙しいのは草田男くんもだろう?」
鴎外はニッコリと笑う。
独特な雰囲気が醸し出されるこの3人を見れば、下っ端の者など怯えて逃げ出すだろう。
『こ、こんにちは。
紅葉姐さん、森さん。』
草田男の後ろからひょこりと顔を出して挨拶をするA。
「おや、Aかえ?
今日も愛いのう。」
紅葉はAの頭に手を乗せ優しく撫でた。
すると突然、
「おぉ、そうだ!
草田男くんとAちゃんに紹介したい子がいるんだ!」
「そうじゃった!わっちもおぬしらに紹介したい童がおる。」
そう言って鴎外と紅葉は自分の前に2人の少年を出した。
鴎外の前に立つのは少し痩せ気味で真っ黒な髪、右目や首、手首など肌が見える至る所に包帯を巻いている少年。
「太宰治くんだ。
仲良くしてあげておくれ。」
そして
「中原中也、という。
無愛想じゃが優しい子じゃ。」
紅葉の前に立つのは茶色のくせ毛で青い目、太宰よりも少し小柄で黒い外套を羽織り、帽子を手に持っていた。
「なんですか?2人して〜、俺の真似?」
草田男はふざけたように笑いながら太宰と中原の頭に手を乗せる。
「よろしくな坊主ども。
俺は中村草田男で、このポートマフィアの参謀だ。
こっちは俺の弟子のAだ、仲良くしてやってくれ。」
草田男はAの背中を軽く押して1歩前にだす。
『東野Aです、よろしくお願いします。』
Aは頭をさげる。
Aが頭を上げると2人はじっとAを見つめ、そしてお互いをにらみ合ったかと思うと直ぐに顔を背ける。
「え、なに?仲悪いのこの2人?」
「うーん、なんだかあまり良くないらしいねぇ。」
鴎外は困ったように笑うと目を細める。
「何がお互い気に食わないのかのぅ。」
紅葉も困ったようにため息をつく。
「2人ともそのうち打ち解けるでしょ。Aも2人と協力しろよ。」
『はい!』
Aは笑顔で草田男に返事をした。
これがAの太宰と中原との出会いだった。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時