34針 ページ35
時は戻りポートマフィアビル内にて
No side
握手を交わした草田男とAは地下を出てビル内の上層階にある草田男のオフィスに来ていた。
そこではシャキシャキとハサミの音が一定のリズムで鳴る。
部屋の真ん中に置かれた椅子に座らされたAは髪を着られていた。
「長すぎても邪魔なだけだから、切るか!」
そういって草田男はハサミを手にしAの髪を切り始めた。
頭を触られたことの無いAは戸惑いながらもされるがままの状態でいた。
『あ、あの……』
頭を動かすことが出来ないため目線だけを草田男の方に向ける。
「ん?なに?」
草田男も器用に手を使いながら目をAに向けた。
『あなたの事はなんと呼べばいいんですか?』
「Aって敬語ちゃんと使えるんだね。
あぁ、そんなことより呼び方かぁ…」
草田男は一度手を止めるとうーん、と唸りながら顔を上に上げる。
2、3秒してからあっ!と声を上げてにやけながらまたAの方に顔を下ろす。
「俺はさ、Aに色んな事教えるって言っただろ。そういう教える人間と、教えられる人間のことを師弟関係って言うんだ。
だからさ、″先生″とか呼んでくれてもいいぜ。」
明らかに草田男は冗談で言ったつもりだったが
『先生、ですね。
分かりました、宜しくお願いします、先生。』
Aには通じることは無く、草田男の案は採用された。
「え、あ、今の冗談だったんだけど……。
ま、いっか。」
そう言って草田男はまたハサミを動かし始める。
10分ほど経って
「はい、終わり!!」
と草田男がハサミを置く。
顔にかかっていた前髪や伸ばし放題だった後ろ髪は、全て切りそろえられ肩につかないくらいまで短くなっていた。
『あ、ありがとうございます。
先生は手先が器用なんですね。』
Aはゆっくり自分の髪を触りながら草田男に聞いた。
「ん、まぁね。
ところでAは文字の読み書きは出来る?」
『すいません、平仮名くらいなら読めると思います……でも漢字は………。』
Aは下を向いて、明らかに落ち込んだ様子だった。
草田男はAの頭の上に手を置いて
「いや、気にすることない。俺も昔は出来なかったから。
さてそうすると、Aにはやってもらわなきゃならない事が沢山ある。
それをまずは説明する。」
草田男はAをソファに座らせ、自分も正面のソファに腰掛けて指を3本立てた。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時