1章 1-2 ページ6
「……友人だ」
視線を逸らした敦に、太宰はぽつりとこぼす。
遠くを見ながら、どこか感傷的につづけた。
「私とAがポートマフィアを辞めて探偵社に入るきっかけを作った男だよ。
彼がいなければ、私とAは今もマフィアで人を殺していたかもね」
「えっ……Aさんも……?」
すれ違いざまに告げられた太宰の言葉に、敦は当惑する。
真実なのか偽りなのか、見当がつかない。
どういう意味なのか?
気になって太宰のほうを振り向くけれど、敦からはその背中しか見えない。
敦が何かを云うよりも先に、太宰が冗談めかした様子で告げた。
「嘘だよ」
その背中には先程までの頼りなげな気配が消え、いつも通りの口調で敦に問いかける。
「国木田君あたりに云われて私とAを探しに来たのだろう?」
敦は思い出したように、はっとなった。
「ええ、大事な会議があるからと。
Aさんも何処にいるんでしょうか?」
もともと敦が此処に来たのは其れが理由だ。
「──パス」
「ええ?」
太宰が背中を向けたまま、さくさくと歩き出す。
敦はそれを非難がましい目で追うが、太宰が振り向く様子はない。
「ちょっと新しい自 殺法を試したくてね」
「またですか?…もう」
ひらひらと手を振る太宰は、一度歩みを止めて木の方に目を向けた。
「敦君、Aならそこにいるよ」
「……へ?」
敦は太宰と同じように木に目を向ける。
『……はぁ〜……』
途端、木の上から大きなため息と、飛び降りてくる人影。
「……うわぁッッ!!?」
敦はおどろいて二、三歩後ろに足を引いた。
木から飛び降りたというのに、着地音は無く猫のようにしなやかだった。
「…な……Aさん!?」
『こんにちは、敦くん』
Aは外套を手で払いながら、にこやかに敦に笑いかけた。
「い、いつから……」
『最初から』
Aの言葉に敦は更に驚いた。
「気が付かなかった……」
『そりゃ善かった。
さて、それじゃあ会議に行こうか。
治くんはもうとっくに何処かへ行ってしまったしね』
「えぇっ!……本当だ」
敦は先程まで太宰がいた場所に目を向けたが、そこにはもう誰もいなかった。
『治くんの自 殺嗜癖は誰にも止められないよ』
「そうですね……」
項垂れる敦を慰めながらAが歩き出すと、敦もその背中を追いかけるように歩き始めた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時