5章 4-3 ページ28
「ビビって帰っていい時はどんな時か判るか？」
問いかける中也の外套が風に煽られ、大きくはためく。
中也の問いの意図も判らず、辻村は当惑しながら首を横に振った。
「……判りません」
「ねぇよ、そんな時」
「！」
辻村の戸惑いを両断するように云いきり、中也が床を蹴る。
その足取りには一切の躊躇が無い。
みずからの進む道を確信しているかのように、中也は空へと飛び降りた。
風圧が襲う。
大気が肌を斬る。
ヨコハマに巣食う龍と、目が合った気がした。
中也はひそやかに声を出す。
「──汝、陰鬱なる汚濁の許容よ、更めてわれを目覚ますことなかれ…」
声に応え、中也の両腕に異能痕が走りはじめる。
異能痕は輝き、光を強め、中也の全身を駆け巡る。
膨大な力が溢れ出す。
汚濁は始まった。
もう中也自身にも止めることはできない。
霧に触れてしまわないよう重力で払いながら、中也はビルの屋上に降り立つ。
同時に、降り立ったビルそのものを破壊した。
中也の足元からコンクリートが罅割れ、砕け散る。
破片が宙を舞った。
砕け散ったコンクリートの破片を足場にして、中也はまるで宙に浮かぶ階段を駆けのぼっていくかのように龍に近づいていく。
ビルを軽々と持ち上げている中也。
そしてそれを龍へと殴りつける。
獣じみた雄叫びが、空気を揺るがし、轟音となって響き渡る。
『………中也、くん……』
龍の開いた口に、中也がビルを丸ごと叩き込む。
激震が起き、ビルが龍を押しつぶす。
龍がビルを破壊する。
超濃度のエネルギー体である龍と、大質量のビルとが激突し、空間が歪む。
龍の喉奥で輝いていた光弾が、行き場を失い内部で爆発した。
それにより生まれた隙を狙って、中也が拳を振り上げる。
全身全霊を込めて、重力子弾を撃ちこむ。
「太宰！」
叫びは大気を震わせ、弾は龍の体を穿つ。
龍が身を捩らせ、耐えきれなくなったように全身が光に変じた。
龍が消え、かわりに真紅の光があふれだす。
灼熱の炎に焼かれたように、霧が吹き飛ばされ、骸砦一帯が光に包まれる。
目を灼くような光のなかで、骸砦が、ゆっくりとその形を失っていく。
曲線を描く塔が折れ、漆黒の影が毀れる。
音も届かない光の極致で、残された欠片が脆く崩れていった。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
