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5章 2-3 ページ24

赤い帯が無数に走り、ドラコニアの隠し部屋が明かされる。




床に偽装された隠し部屋には、まだまだ多くの結晶体が保管されていた。




暗い笑みを浮かべ、フョードルは虚空を見据える。




「死の事実を忘れ、自分を収める部屋を自ら管理する蒐集品。

それが今のあなたです。


あなたは虎に爪を立てられ、殺されてしまったのです……」





『虎……敦くんのことか……』



「ええ、その通り」




フョードルを睨み続けていたAが静かに口を開いた。



フョードルはAに向けて甘美なほどの笑みを向ける。





二人の頭上で、赤い光球が輝きを強める。





幾百、幾千の異能を喰らい膨れ上がった光は、其処に斃れていた太宰治の遺体までも取り込もうとする。




太宰の遺体が浮き上がり、光に呑み込まれた。




『治くんッ!?』



「…君は欲張りだな、太宰君」



フョードルはやや驚いた顔で云う。



「死して尚、この街の終末を見届ける気か」




直後、爆発を起こしたように光が周囲に広がった。



窓硝子が砕け散る。



光はもはや、小さな塔などには収まりきらぬと云いたげに、骸砦から外へと滲み出ていく。




『貴方はこれ以上、何を企んでいるの?』



Aは兜割りを手に持ち、フョードルへと向ける。




「さあ」



曖昧に答えるフョードルに、Aは顔に怒りの色を滲ませて体を構える。




『ここで貴方を止める』




「異能も無いのに、ですか?」




莫迦にしたようなフョードルにAは一瞬で近づき、その頭めがけて兜割りを薙ぎ払う。



しかし、それは避けられ、お返しとばかりにフョードルの手から澁澤の頸を斬ったナイフが投げられた。




それを頬に掠めながら、Aは大きく後ろに退りフョードルと距離をとる。




「いいことを教えましょう。


この霧の中で、なぜぼくの異能が分離しないか考えた事は無かったのですか?」




Aはピクリと反応して眉を寄せた。





フョードルに答えるように、突然Aの背後から足音がドラコニアに響いた。




その足音に気が付いたAが振り返ろうと、半身を捻った瞬間








Aの脇腹に刃物が突き刺さる感触。





『…くッ……!?』




Aの横腹には、先程フョードルが投げたナイフが深く刺さっていた。




そしてそれを握っていた人物は、ナイフから手を離すと、ゆっくりとドラコニアを横切り、床に落ちていたリンゴを拾う。



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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時

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