間幕 3-6 ページ22
澁澤の両目が大きく見開かれた。
「……ちがう?これではない?」
澁澤が後退る。
慄く澁澤は、フョードルが醜く歪んだ笑みを浮かべていることに気が付かない。
一方でAはフョードルの表情を見て警戒しつつも結晶体に目を向ける。
真紅の結晶体はどんどん光を増し、ついには中空に浮いていた巨大な赤い光と惹かれあいはじめる。
太宰とフョードルが二人で作った、ドラコニアの異能結晶コレクションをまとめた赤い光。
太宰が持つ無効化の異能が結晶化した真紅の光。
二つの光は、凄まじい引力で結びつく。
莫大なエネルギーを持つ大きな紅玉の光が生まれようとしていた。
想定していなかった事態に、澁澤の顔から自信がこそげおちる。
落ちくぼんだ瞳で見上げるのは、手に負えないほど膨れ上がっていく光の球だった。
「何だ……?」
″これ″は一体、何なのか。
答えが出る前に、澁澤は、成長を続ける光に弾き飛ばされた。
・
5章 2-1
魔境と呼ばれるヨコハマ租界の中心地に、骸砦は聳え立つ。
その頂上につくられたコレクションルーム、ドラコニアで、塔の主であるはずの澁澤は無防備に目を見開いていた。
支配者として振る舞っていた面影は無く、ただただ茫然と目の前の情景を見ている。
凶悪な赤い光を放ち、暴風を吹き荒らす巨大な光。
Aも風を手で遮りながら、太宰の死体を掴んでただ傍観するしかなかった。
戦慄する澁澤と傍観するAに、フョードルがおとぎばなしを聞かせるように語りかけた。
「融合の異能と、無効化の異能、相反する二つの異能がひとつになり、特異点が生まれる」
「!」
澁澤とAの視線がフョードルに注がれる。
この云いぶり、フョードルにとっては想定内のことだったのだろうか。
それとも──これこそが、フョードルの描く″あらすじ″だったと云うのか。
衝撃で言葉を紡げない澁澤のまえで、フョードルは髑髏を取り出した。
踵を鳴らし、澁澤に近づく。
「太宰君の異能を手に入れても、あなたが本当に求めているもの…″失われた記憶″は戻りませんよ」
「何故それを知っている!?」
澁澤の顔色が変わった。
『″失われた記憶″…?』
思わず立ち上がった澁澤に、フョードルは美しい笑みを向ける。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時