幼少の思い出 ページ38
「てっぺんの孤児院までどっちが速く行けるか競走しよう！！」
『分かった！負けないよ！！』
小高い丘が見える場所でで二人の子供が笑い合う。
一人は両目が紫色で少しだけ小柄なA。
もう一人は両目が紅色でAよりも少しだけ背の高い兄。
目の色以外は全てが瓜二つだった。
「よーい、ドン！」という掛け声と共に二人は走り出した。
最初は同じだったのが徐々に兄が前に出る。
前に出た兄が少しだけ後ろを向いて笑顔で叫んだ。
「はやく！置いて行っちゃうよ！」
『待ってよ！そんなに速く走れないよ！』
後ろを追い掛けるAは少しだけ拗ねたような表情を浮かべていた。
先に行ってしまう背中を見つめながらAは少しでも追い付けるように必死に走った。
そのうちAと兄の距離は広がり、ついには兄の背中は見えなくなってしまった。
『お兄ちゃん……』
背中が見えなくなった途端、寂しさがAを襲う。
丘の下に着く頃には兄がいた形跡すら無かった。
独りで丘の頂上へ続く木板の道を登るAの目には涙の幕がうっすらと張られている。
･
「やっと来た！」
もうすぐで孤児院の門が見える所で、俯いてたAの耳に大好きな声が届いた。
ぱっと顔を上げるとAを待っていた兄の姿。
「あはは、足遅いなあ」
『お兄ちゃんの足が速いんだよ』
泣きそうになっていたのがバレたくなくてAはムスッとした顔で兄から目を逸らす。
それを判っているのか兄はAに近づきその頭を優しく撫でる。
『なんで、先に孤児院の中に入ってなかったの…？』
撫でられながらAは上目遣いで兄を見る。
兄はニカッと眩しい笑顔を浮かべると
「此処に帰ってくる時は独りじゃダメだからな!!」
と云った。
「俺はAを独りにしないし、Aも俺を独りにしない。
俺達はこれからもずっと一緒だ、だって兄妹だからな！」
兄はAの頭をわしゃわしゃと撫でて手を差し出す。
「ほら、皆と先生達がきっと待ちくたびれてる。
早く帰ろう!!」
『うん！』
Aは差し出された手を強く握って笑顔で頷く。
二人はそのまま孤児院の門をくぐった。
″独りにしない″という約束が破られてしまうのは……もうすぐ、後のこと。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます！！そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください！ (2019年10月17日 0時) (
レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね！ (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言って頂けて凄く幸せです！この作品を楽しんで頂けて何よりです！これからも頑張っていきます！！ (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます！なんとか完結出来ました！また他の作品も頑張っていきます！ (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 15時
