私のせいだから ページ33
ボクは大きく後ろに退る。
その瞬間、ボクのいた場所を鋭く黒い物が地面を削った。
『獣の爪か』
地面に手を付きながら、お兄ちゃんの方を見る。
お兄ちゃんの足元の影には見覚えのある黒い物体がいる。
『獣』
ボクの声に反応することなく獣はボクを襲う。
『ッッ!!?』
迫り来る獣の爪をナイフで弾きながら前に出るが、それを待っていたかのように獣が大きく空中を薙ぐ。
お兄ちゃんはボクと獣の戦いを見ているだけだ。
ガキンッガキンッと硬いもの同士がぶつかる音が響く。
ナイフで致命傷になるような攻撃は弾くか防いでいるが、ボクの体には小さな傷が増えていく。
コートを切り裂き、血が滲んだ。
ボクがお兄ちゃんに近づけたとしても、ボクの影がお兄ちゃんの影と繋がるので、獣がボクの影に入ってくる。
そのせいでより近くで獣の攻撃を受けることになる。
諦めてお兄ちゃんから離れれば、獣はボクの影から出ていき、お兄ちゃんの影に戻る。
銃でお兄ちゃんを狙おうにも、獣が立ち塞がるせいでお兄ちゃんに当たらない。
『はぁ…はぁ』
上がる息を整えようと大きく呼吸をする。
その隙を狙って獣が襲い掛かってくる。
間一髪避けて、地面に受け身を取りながら転がる。
「もう諦めろよ」
ボロボロのボクを見てお兄ちゃんが口を開いた。
それからお兄ちゃんが見ている部分に視線を移す。
それはボクのお腹で、森さんが治療してくれた部分が赤く染まっていた。
激しく動いたせいで傷口が開いたのだろう。
痛みを感じないのは、痛み止めのお陰かな……。
「もう、諦めて静かに殺されろよ」
お兄ちゃんの声は呆れたような雰囲気を持っていた。
でも、それだけじゃない。
その中に少しだけ、辛そうで悲しそうな色があるのをボクは感じていた。
ボクはお腹の傷口を手で抑えながら立ち上がる。
『嫌だよ、これはボクのせいだから』
ボクの発言にお兄ちゃんの顔が僅かに歪む。
『違うね。
ボク、じゃない。
私、のせいだ』
私はゆっくりと口角を上げて、ナイフを握り直した。
「お前に何が判るんだよ」
苛立つようにお兄ちゃんはボクを睨みつける。
『判るよ、だってお兄ちゃんをそんな風にしたのは私だから』
「何云って──」
『私が中途半端にお兄ちゃんを殺したから。
それなのに、私がお兄ちゃんを求めてしまったから』
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます！！そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください！ (2019年10月17日 0時) (
レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね！ (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言って頂けて凄く幸せです！この作品を楽しんで頂けて何よりです！これからも頑張っていきます！！ (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます！なんとか完結出来ました！また他の作品も頑張っていきます！ (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 15時
