治療 ページ28
『……ッ！！？』
ガバッと体を勢いよく起こす。
『ハァ……ハァ……』
荒い呼吸とうるさいくらいに鳴り響く心臓の音。
思わず胸元を抑えて、縮こまるように何度も大きく息を吸った。
ふと、自分の手を見つめると小刻みに震えていた。
『さっきの……夢…？』
夢の中で、過去を遡るなんて……。
最後の…獣に首を凪払われる感触が妙にリアルだった。
頬を伝って流れ落ちる汗を乱雑に拭って周りを見渡す。
『どこ…此処…』
そこは病院のような、白を基調とした個室だった。
ボクは窓際のベットの上だ。
『なんで生きてるんだろう？』
確かにボクはあの場所で倒れていたはずなのに。
そこまで思い出してはっとする。
慌てて着ている洋服を捲れば、刺されたはずのお腹には綺麗に包帯が巻かれ、適切な処置が施されていた。
着ている洋服も、普段の洋服じゃなくて病院着のようなもの。
『誰が……というか此処は病院、なの？』
ぺたりと地面に足をつけて、窓のすぐ側に寄って外を見てみる。
『……あ、此処って……』
そこから見える景色は、地上から遥か遠く離れた高層ビルからのものだった。
『…じゃあ此処は…』
そこまで呟いて、背後からガチャリという音がする。
「お、目が覚めたのか」
ゆっくりとそちらを振り向けば、黒い帽子がトレードマークの人だった。
『…中原さん』
「首領が云ってたよりも早かったな」
中原さんはベット際の丸椅子を手で引いてその上に座る。
ボクもベットに中原さんと向き合うようにして座った。
『此処はポートマフィアのビルなんですね』
「あぁ、よく分かったな」
ボクがこぼした言葉を中原さんは丁寧に拾って答えてくれた。
『これ、やってくれたのは…』
「…首領だ」
これ、とボクは自分のお腹を指さす。
中原さんは一瞬だけお腹を見たけど、すぐに目をそらしてそれだけ云った。
『そうですか…森さんにお礼を云わなきゃいけませんね』
ボクはゆっくりとお腹を擦りながら地面に目を落とした。
「……あの場所はマフィアの管轄区域だ。
お前、なんであそこに居た？」
暫くの沈黙の後、中原さんが言葉を選ぶようにゆっくりとボクに聞いてくる。
ボクは地面から中原さんへと視線を移した。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます！！そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください！ (2019年10月17日 0時) (
レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね！ (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言って頂けて凄く幸せです！この作品を楽しんで頂けて何よりです！これからも頑張っていきます！！ (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます！なんとか完結出来ました！また他の作品も頑張っていきます！ (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 15時
