黒い池 ページ25
『お、兄ちゃん……』
「正解、久しぶりだねA」
ギリッと首元の手がきつくなった。
『かっ……はっ…』
締まる喉元に乾いた声が漏れる。
『な、んで……』
首元を締める手を掴みながら思い切り兄を睨みつける。
すると兄は興ざめしたかのように途端に無表情になって、ボクの首から手を離した。
開放感からボクはその場に座り込んで、咳き込みながら酸素を取り込んだ。
『げほッ……げほッ!!』
「なんで、じゃないだろ」
頭上から降り注ぐ兄の声は小さい子供を諭すような、それでいて冷えきっていて、ボクの体を突き刺すような威圧感があった。
「Aが俺を殺したから」
『ッ!?』
足が地面に引きずり込まれる。
足元に目をやれば、そこには真っ黒地面。
いや、違う、異能の影だ。
影は池のようにボクと兄の周りに広がり、ボクの足を底なし沼のように引きずり込んでいく。
ボクとは真逆に、兄は沈む様子もなく立っている。
「逃がさないよ」
『ッ獣!!来て!!』
さっきと同じように獣に呼びかけるが反応がない。
「獣ってAのお気に入りだよな。
それって、この子?」
ボクの必死さを嘲笑うかのように、兄が手を振り上げると影から獣が現れた。
『け、もの……?』
ボクは呆然とそれを見つめる。
いつもならこの状況に意地悪な言葉のひとつでも投げかけてくるのに、獣は黙ったまま何も云わない。
ただボクに静かな目を向けてくるだけだった。
「ねえ、死んでよ──」
ドスっと体に衝撃が走る。
自分の体を見れば、お腹に刺さる黒い物体。
それは地面の影からまっすぐとボクの体に伸びていた。
痛い、と思うよりも先に口から血が吐き出される。
「痛い?痛いよね、俺も痛かった。
次は心臓に突き刺してあげる。
安心して、今度は痛くない、一瞬だから」
兄はそう云って指をボクの心臓に向けた。
その動きに合わせるようにして影から、細く先が鋭く尖った物体がボクの心臓へと向けられる。
朦朧とする意識の中でその光景だけがやけに鮮明に目に映った。
じゃあね
感情のない兄の声が聞こえた気がした。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます!!そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください! (2019年10月17日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね! (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!!そんなふうに言って頂けて凄く幸せです!この作品を楽しんで頂けて何よりです!これからも頑張っていきます!! (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます!なんとか完結出来ました!また他の作品も頑張っていきます! (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 15時