誰から? ページ23
A side
空を仰ぎ見れば、どんよりとした鈍色の雲が覆っていた。
『嫌な天気….』
ぽつりとそんな言葉を漏らしても誰も拾うことは無い。
当たり前だ、今この場にはボクしか居ない。
太宰さんと中原さんにボクの事を″少しだけ″話してから一週間が経った。
結局あのあと、ボクはあの場を去り、二人がその後どうしたのかは知らない。
ボクはと云えば、何でも屋の仕事を再開してそれなりに毎日を過ごしていた。
そして一昨日、依頼の手紙がボクの元に届いた。
おかしなことに依頼主が不明だった。
その手紙には新聞の文字を切り取ってメッセージが作られていた。
まるで脅迫状のようだ、と思ったがボクの元にはこういう形で依頼が来ることは珍しくはない。
財政会のお偉いさんや裏社会に足を突っ込んでいる政治家など、簡単には身を明かせないような立場にいる人間がよくやるやり方だ。
今回送られてきた手紙には、日にち、時間、住所とそこに来るように、という指示だけが記されていた。
その場所が此処で、時間はもうすぐ。
ボクは周りを見渡す。
そして無意識に眉を寄せた。
此処は──
龍頭抗争で銃撃戦が起こった場所だ。
この場所は居心地が悪い。
思い出したくないことを思い起こさせる。
ふと、足元の影から狐が浮かんだ。
狐はボクの足に頭をすり寄せる。
ボクはしゃがんでその体を撫でてやった。
〔Aは僕達のこと嫌い?〕
狐はボクを見上げてそう云った。
〔恨んでる?〕
ここ最近、異能の動物達がよそよそしかったのはこのせいなのだろうか。
一週間前、中原さんに聞かれた質問を、この子達も聞いていたんだ。
─「お前は、その異能を恨んでねえのか……?」─
ボクの答えはあの時と変わらない。
『恨んでないよ。
むしろ君たちにいつ引き込まれてもボクは構わない』
ボクがそんなことを云うと狐は悲しそうに目を細めてから、雫のように影の中に消えてしまった。
『悲しませてしまったかな…』
足元の影を見下ろす。
曇っているせいで影はいつもより薄い。
こういう日はボクの異能にとって最悪の日だ。
光が強ければ強いほど影は濃くなる。
逆に光が弱ければ影は薄い。
今日みたいに曇っている日は影が薄いせいで、異能を操るのが難しい。
コツ
ふと、足音がして顔を上げた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます!!そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください! (2019年10月17日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね! (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!!そんなふうに言って頂けて凄く幸せです!この作品を楽しんで頂けて何よりです!これからも頑張っていきます!! (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます!なんとか完結出来ました!また他の作品も頑張っていきます! (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 15時