46.青年side ページ46
彼女と買い物に行くだけだった。
なのに後ろから小さい悲鳴が聞こえて
気づくと、彼女は階段から落ちていた。
一瞬の出来事で、何が起こったか分からなかった。
後ろを振り向くと、男が1人上から彼女を見ている。
背筋が凍り付いた。
笑って狂っている…。
俺は急いで彼女に駆け寄り、名前を呼んだ。
何も反応はなく、強く打った頭からは血が出ている。
「っ…A」
なんで、こんなことになったのか。
何で彼女なんだ。
俺の不注意で、彼女が…。
震える手でスマホを取り出し、救急車を呼んだ。
出血が止まらない彼女の手を強く握る。
青ざめていく姿を見て、どうしていいか分からず
押しつぶされそうな気持ちに、体ごと震えだした。
怖くて、気づいたら涙が出ていた。
あれ、ずっと泣いたことなんかないのに。
俺にはただ
彼女の名前を何度も呼んで、冷たくなっていく手を繋ぐことしかできなかった。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2020年11月27日 22時