揺らめく目の女【沖田総悟】

85.代償 沖田side ページ37

______一週間後



「......ついこの間退院したってのに、またこの病院に厄介になってんじゃねーか」



なあ、と白いベッドに横たわる神谷に呼びかけるも、返事は返ってこない。

こんな一方的なやり取りを毎日続けているが、神谷は答えるどころか目覚めてもいないのだ。反応が全くないというのはこの上なくつまらない。


(医者の話では、そろそろ目が覚めてもおかしくねェ筈だと)


神谷はひどく傷ついていたが、致命傷ではなかった。

攘夷志士は人質を間違って殺すことがないよう、本気で傷つけはしなかった...屋上から飛び降りた時に出来た傷の方が深いくらいだ。


そう、コイツが自分の意思で、屋上から飛び降りた時の_____


(...あの顔が頭から離れねェ)



手下共を殲滅して屋上の扉を開けたら部下が飛び降りるシーンだなんて、そもそも俺でもなければトラウマレベルだろう。

現に俺も、あの瞬間は身体中の血が全て抜けたのではないかと錯覚するほど動揺していた。



(こうなっちゃ団子と限定桜餅くらいじゃ割に合わねーぞ、神谷。)



まずは落ちる瞬間浮かべていたあの胸糞悪い表情を払拭するような顔をさせようと決意する。

表情筋がなんだ、無理矢理にでも笑わせて次の日顔面筋肉痛にしてやる。



あとは...いつも通りっちゃいつも通りだが、書類は全部押し付けてやろう。それが終わったら土方への嫌がらせを手伝わせて、見回り中のサボりに巻き込んで....その後は、松屋の桜餅でも食べよう。


まだまだコイツにはやらせることが沢山あるんだ、こんなところでぐーすか寝ている場合じゃねェ。





(だから、)



「早く、起きやがれ...A」

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