悟が彼女泣かせた件について。【五条悟】 (ページ8)

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実際、Aも自分と同じ考えのように見えて。
まぁ、実際すぐに縮めよう、縮めたい。
そんなことを考えては微塵もないのだが。

少なからず、Aは距離を縮めたかったかもしれない。
急ぎじゃなくても、少しでも。
1㎝でも、1㎜でも。距離で表せなくても。

ベンチに1人腰かけた。
12月のベンチは氷の様に冷たい。

五条の心情など知らず、同情することもなく、
風も皮膚がいたくなるほど冷たかった。
当然上着を持っているわけでもなく、
五条は冷たい風に当たっていた。
物理的にもきちんと頭を冷やしていけた。

あの時俺もアイツも時間があっただろ？
デートするくらい、一緒に過ごす時間ぐらい。
余裕も時間も、全部あっただろ。

今考えれば、付き合ってるはずなのに、
恋人らしいと言えることを、1つもしてない事も
また事実であってしまった。

デートも、プレゼントも
名前を呼んだのだって皮肉を込めてだ。
一緒に、素直に、心から。

皮肉も喧嘩も怒りも。

負の感情(呪い)をなしにして、
最後に2人一緒で笑いあえたのはいつだった？
最後に、なんて言ってるけれど、
その最初すらもないかもしれない。

五条は膝に肘をついて、
その手に顔を乗せて俯いた。

風は相変わらず強くて冷たくて。

最後に笑ったAの顔が。
五条の中にはずっと残っていた。
何時しか偶然自分に向けてくれた、
恐らく最後であろうこの笑顔が。

無意識にも自分の心の中に、
何故か心の中に残ってくれていた。

『悟、先生に怒られる！』

『私言うほど馬鹿じゃないし！？』

『あーそれ私が買っといたやつぅ！！』

最後に楽しそうな声を上げて、
楽しそうに笑って話したのはいつだ？

自問自答を繰り返せば、
答は1つも出てこなくて。

好きな女の子1人、泣かさず
一緒にいることもできないなんて。

俺は自分で思ってるより、
周りに言われているよりも、
結構馬鹿なクズらしい。

仮にも俺はあいつの彼氏で。

初めて見たあの泣き顔。

俺は、恋人の癖に初めて彼奴の泣き顔を見た。