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「でも、七海くんが、俺に好意を寄せる意味が分からないな」
高専時代の七海くんとは、悟くん達とは違い、不仲だった訳でも無かった。彼の友人が良い人だったので、普通の仲だった。七海くんが心の中で、俺の事をどう思っていたのかは知らないけれど
「貴方は、貴方自身の事をどう思っているんですか?」
「うーん・・・。この世で一番高貴で、呪術界では素晴らしい存在に位置するかな」
「そうでは無くて、貴方は素敵な方です。・・・貴方は彼を助けようとしてくれたでしょう」
「そうだね。無理だったけど」
七海くんの友人が亡くなったと聞いた時、俺は自分に出来る事をしたかった。しかし、それが形になる事は無かった
「言い訳になるけど、あの頃の俺には力が無かったんだ。ごめんね」
「いえ、話は五条さんから聞いてます」
「そう。それなら良いけど。悟くんには、頭が上がらないねぇ」
人への気遣いが昔に比べて格段に上がっている。昔ならすぐに喧嘩を吹っ掛けて来るタイプの人だったので、あのまま育っていれば、今頃、自分はどうなっていた事やら
過去の出来事は変えられないが、そのお陰で今の自分達が、ここにいられている
「いつから、五条さんを名前で?」
「ん?目が覚めた日かな」
「そこまで仲が良かったように思えませんが・・・」
「俺もそう思ってたんだけどなぁ」
どちらかと言うと、お互いの利益の為だけの関係だと思っていた。悟くんが俺の事を名前で呼ぶ事も無かった
お前やコイツと言われたら、自分の事だと思うぐらいには、そちらに慣れていた
「七海くんも、名前で呼ぼうか?」
「是非そうしてください」
「あ、うん」
断られると思っていた冗談なのに、あっさりと賛成されてしまって、毒気を抜かれる。それほど俺の株は高いのだろうか
「建人くん、呪術師はクソ?」
「そうですね。こんな世界、無ければ良かったのに、と何度も思いましたが、ここが無ければ、私達は出会っていませんからね」
「そうだったね」
呪術界はクソだが、そんなクソみたいな世界が無ければ、ここにいた全員が出会わなかった。それは確かだろう。だけど、ここに来なければ辛い想いもせずに済んだ
「それじゃ、俺は雑務に戻るよ。建人くんもお仕事、頑張って。あと気を付けてね」
「はい。Aさんも、お気を付けて」
「またね」
建人くんと別れて、再び歩き出す。歩いた先で、ポケットに入れている携帯が震えて、立ち止まる。携帯を手に取り、電話に出れば、俺宛の任務が来たと言う報せだった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年1月2日 12時