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「・・・大人って、ズルい」
「あっは。大人はそんなもんだよ」


服の中に顔を埋めてしまった虎杖くんに返す


「先生」
「うん?ん、」


虎杖くんに呼ばれて、彼の方を見れば、唇に何かが当たった。それは紛れも無く、彼の唇であり、ゆっくりと離れた彼は熱っぽい視線を向けて来る


「・・・今の初めてだかんね」
「ファーストキス?」
「そうだよ!!あー、もう早く宿儺の指探そー!!」


いきなり立ち上がった虎杖くんは、どこかに行ってしまう


「デゼル、ついて行ってあげて」
「ああ」


一人には出来ないので、デゼルに追い掛けてもらう。自分も立ち上がり、辺りを捜索する事にした


「それにしても、柔らかかったな・・・」


虎杖くんの唇が触れた自分の唇に触れながら、独り言を呟く。これが若さと言うものか。そんな事を思いながら、宿儺くんの指を探した


「みーっけた」


もう何本目だったか、宿儺くんの指を見付けて、虎杖くんの事を探した


「せんせ、見付かった?」
「見付かったよ。食べる?」
「おう」


彼に指を渡して、呑み込ませた。彼の体に触れて、宿儺くんの力を抑える


「そんな事せずとも、代わらんわ」
「あ、そう?」
「大人しくなったな、お前・・・」
「喧しい」


二人もかなり仲が良くなっているようなので、少しばかり安心した


「次で最後だ。貴様、本気で小僧を殺す気か?」
「虎杖くんが望めば、苦しまないように殺すよ」
「せめて俺が寝てる時に、そういう話しして?」


三人で適当な話をしながら、最後の指がある場所を目指した。最後の一本も、すぐに見付かった。意外と真面目に探せば、すぐに見付かるものだ


「食べる?」
「食べる、前に・・・、先生にお願いしたい事があるんだけど、良い?」
「うん、良いよ」


返事をした瞬間、彼が目の前に来た。そして、目を閉じれば、口付けられる。続きをしようと思っている彼の胸元を押して止める


「先生・・・?」
「人払いするから待って。はい、出てって。ミクリオは領域をお願いね」


そう言って手を叩けば、俺の中から仲間が出て来る。ミクリオは呆れながらも、領域を出してくれた


「さ、続きやろうか。最後が俺で良いの?」
「うん、ありがとう。先生」
「どういたしまして」


虎杖くんに身を預ければ、本当に初めてなのか、と訊きたくなるぐらいに優しくされた

人の営みというものは不思議だ


「天使先生、」
「Aで良いよ」
「Aさん、俺を殺して」


宿儺くんの指を全て食べた彼の願いを叶える時が来た。真っ直ぐ俺の事を見詰めて言った彼には、迷いは無いようだった

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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年1月2日 12時

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