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先手を切ったのは晋助の方だった。
力強く滑らかな太刀筋。それは銀時と勝負している時に私がよく見ていた太刀筋だった。
松下村塾の稽古場が私の視界に広がる。目の前で悟と傑を相手している晋助が、幼い頃のその姿と重なって見えた。
私があの時、逃げ出さなければ、そばに居てやれば、未来は違っていたのだろうか。
「…………A」
「どうした、しょう、こ……?」
硝子に頬を指で拭われ、私はそれに気づいた。
慌てて私は晋助達の方に目をやる。ちょうど晋助が木刀で2人を薙ぎ倒したところだった。
私は急いで目を拭って立ち上がった。
「私に勝ててないし結果は分かりきってたが、よく頑張ったなお前ら!」
「お前は一言余計なんだよくそ!!」
「晋助、次はあの一年坊、扱いてやってくれ!」
「だからなんで俺が、」
「いーだろ!!後でヤクルコ飲みに行こう!!な?!」
晋助は小さく舌打ちしてベンチの一年坊のところに歩いていった。
晋助とまた、こんな会話ができる日が来るとは思ってもいなかった。
向こうでは私は真選組で、晋助は過激派攘夷志士、敵同士だ。それにも関わらず、晋助は私の周りにふらっと現れては、なにをするでもなく姿を消すということをよくしていた。
ダチなら間違った道を進んでいくそいつを、友情を壊してでも止めるものだと分かってはいた。だが、晋助の持つ思想も、完全に間違っているのかと問われれば、私は素直に頷くことができなかった。
それに、晋助を刺し違えてでも止めようとする奴がいる。晋助はあいつにしか止められないだろう。
私にできることは、永遠と終わらない道を独りで歩くそいつの隣を、共に歩くことぐらいだ。
「早く来い」
「えぇ……」
訓練場でタジタジになっている一年坊たちに向き合って呆れた顔をする晋助を見て笑いがもれた。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時