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「深夜になる前には帰るので。あ、晩飯仕方ないから作っとくんで、厨房誰かに教えてもらって食べてください」
着替えたAは綺麗めだがしっかり露出は多い服を着ていた。
土方さんは布団をベッドの上に押しやる。
「どこ行くんだよ」
「ちょっと、お客サマにいい感じのとこ呼ばれたんで」
そう言って部屋から出ようとするAの腕を土方さんは掴んだ。
「…………こっちでもそんなことやってんのかよ」
「土方さんには関係ないでしょう」
「お前……いつまでそんな強がりやってるつもりだよ」
「……別に強がりじゃないです。離してください」
「お前のしてるそれは自分の首を絞めてるだけだ。復讐にもなりゃしねェ。だからいい加減、」
「そんなにやめさせたいなら、アンタだけの私にしてみせろよ」
そう言い切ったAの声はまっすくだった。
部屋が静まり返った。誰も、一言も発しなかった。
「……間に受けないでくださいよ。冗談です」
Aはそう言い残して、今度こそ部屋を出ていった。
張り詰めた部屋の空気がまだ残っている。その空気の中では指一本動かすのもやっとだった。
はぁ、と深いため息をついて頭を掻きながら土方さんも、そのまま部屋を出ていった。
気まずい雰囲気だけを残して、その気まずい雰囲気を作った本人達はそそくさと退散していった。
なんて人達だ。
そしてAはその気まずい雰囲気だけでなく、私の心に刺さった杭まで金槌で強く叩いていった。
Aが、土方さんに向けたその表情が、頭にこびりついて離れなかった。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時