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傑がAのことを好いているなんて、この前まで全く気づかなかった。そして、それを知って、なんともいえない気持ちがまた胸の中に渦巻く。
そもそもAはこっちの世界の人間じゃない。いつか帰るんだ。
そして、向こうではAの帰りを待っている人間がいて、俺らよりも長い時間、Aと過ごし、大事に想い合っている人が大勢いる。
そんなAにする恋が、報われるはずがない。
「交代交代!次、傑と雄な!」
「夏油さんと……!!頑張ります!!」
「手加減はしないよ」
準備体操を始める傑を真似て、灰原もぎこちなく体を動かし始める。
七海は壁にもたれかかってその2人の試合を観戦するポジションについていた。だが、気づけばAがいない。
どこに行きやがったんだあいつ。
「わっ!!!」
「うぉわぁ!!!!お前かよ!!!」
いつの間にか俺の背後にいたAに不覚にも驚かされた。
驚かせた当の本人はケラケラと大爆笑している。硝子もくすくす笑ってる。
どっから湧いて出てきやがったんだよくそ!!
「悟、朝から元気なさそうだが、腹でも下したか〜??」
「下してねぇよ!!あっち行け!!」
しっし、と手を追いやるように動かす。
Aはそれを全く意に介す様子もなく、その場から動こうとしない。
「ぅわ冷てぇ!!なんだよ!!」
「水分、取っとけ」
急に俺の頬に冷たくて濡れているものが当てられ、ぶん取ると、ペットボトルのコーラだったとわかった。
Aはそれだけ残して、傑達のところに行ってしまった。
元気なさそうなやつに水分補給でコーラ渡すか、普通。
「えーいいな。ちょっとちょうだい」
「…………喉乾いてるし、全部飲むから無理」
「けちくさー」
そうは言ったものの、そのコーラのペットボトルのキャップはずっと閉じられたままだった。
寝不足はとてつもなく判断力を低下させる(五条)→←察しろなんて簡単に言うけど、簡単じゃないから(五条)
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時