察しろなんて簡単に言うけど、簡単じゃないから（五条） ページ35
Aと七海が旅館で卓球をガチってる。それを灰原と傑が観戦していた。
灰原は傑によく懐いていて、観戦中もその2人のプレーについて、しきりに傑に話しかけている。
俺は、硝子と少し遠くの方で座りながらその卓球と、仲睦まじげに話す傑と灰原を見ていた。
傑も、Aも朝に起きてから、何も変わらずいつも通りだった。
俺が見た光景は夢だったのかとさえ思えたが、体に感じる寝不足からくる気怠さで、夢じゃないと判断した。
それに、Aがいじめられてるっぽいガキの仲裁に行って、なぜか服を脱ごうとした時も傑は真っ先に向かって行った。
ずぶ濡れになったAに薄い羽織を貸したのも傑だった。
硝子は隣でぼーっと卓球の球を目で追っている。
「なぁ……硝子」
「なに」
「傑って……Aのこと好きなの？」
それを聞いた硝子はボールを追っていた目を俺に向けた。
少し驚いたような顔をしている。
「え、今？」
「え？」
今？どういうことだ。
「……それ、どういう意味？」
「今更かよって意味」
「え」
そんなに前から傑はAのこと好きだったんだ。
…………ってか、まじで好きなの？……まじ？
「え、本当に……？？いつから？？なんで？？」
「質問が多いしそこまで知らない」
俺の口をついて出た疑問は答えられることなく、バッサリと切り捨てられた。
硝子は俺から、傑に視線を移す。
「見てたらわかる。夏油の、Aを見る目が全然違うから」
灰原と話しながらも卓球をしている方を見る傑は、よくAの方を見ていた。
見る目が違う、なんて言われても、あまりわからなかった。
だが、ふとした時にみる傑のAを見つめる横顔を思い出し、あれがそうなのか、と考える。
「ぐふぉっ！！お前建人！！！今のわざとだろ！！」
「わざとじゃありません。あなたの無駄にいい顔面が腹立たしいなとは思っていましたが」
「絶対わざとじゃねぇか！！！Aサンの美貌に嫉妬すんなし！！」
頬を押さえながら、Aは七海を指差して騒ぎ立てる。
七海は真顔ですっとぼけをかましていた。それを見て笑う灰原と傑。
楽しそうにしている。
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作者名：フルーツパンチ侍 | 作成日時：2023年9月14日 12時
