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急に現れた傑に、ガキ達も怖がるような反応を見せる。
私を見下ろす傑の目は、ストーカーに譲歩した時のあの目と同じ目をしていた。
「……怖いオニーサンが現れたからやっぱ、なしで。とりあえずお前らわかってんなろうな?今度やったら、この怖いオニーサンがお前らボコしに行くからな」
私の腕を引いて行こうとする傑に少し抵抗し、手持ちのペンでいじめられっ子のガキの手のひらに私の電話番号を書いた。
「なんかあったらそれにかけろ」
今度こそ強引に引っ張っていく傑に連れられ、私は桜並木まで歩く。
傑が見ている前での行動としては、まずかったかもしれない。
「……すぐ、見せるんだ」
静かな、平坦な声で、表情も見えない傑ぼそりと呟いた。
「…………子供の頃の記憶っつーのは、良くも悪くも背後霊みてぇに一生付き纏ってきやがるんだよ。この身ひとつで悪い背後霊一体消えんなら安いもんだろ。それに、ガキに見られたところで、だしな」
「…………私達もガキだから、あの時、見せたんだ」
あの時、と言うのは温泉の時のことを指してるのだろう。
傑が何を言いたいのか、びしびしと伝わってきた。
「……正直に言うと、違う。あれは悟と傑だったからだ」
そう言うと、傑はさっきまで引きずる勢いで進んでいた足がぴたっと歩みを止めた。
私も、そんなほいほい自分の体を晒さない。普通に出し惜しみする。
「…………ほんと、ずるいよね、Aって」
「……知ってる」
いつもそう、言われてきた。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時