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「高杉さん達は…………仲が良かったんですね」
「あ?」
Aが自力で歩けなくなるまで飲みつぶれたのは初めてのことだった。
なんやかんや言いながらも、Aはこの人を信頼しているのだろう。硝子も酔っ払って、悟に介抱されている。
私はAに肩を貸しながら夜の道を歩く高杉さんに声をかけた。
「仲良くねェよ。……ひとつ世界が違えば、敵同士さ」
「……でも、私達はAにあんな笑顔、向けられたことがない」
前を向いて歩いていた高杉さんが私の方に顔を向けた。
「……Aは、テメェらのことも可愛がってるだろ」
「はは……それはそうかも知れないですね」
「少なくとも……オメェらに、コイツの中を土足で踏み荒らすのを許すぐらいにはな」
その言葉にはっとして、私は高杉さんのことを見た。
高杉さんは、もう私を見てはいなかった。
「…………なんで、Aと敵同士になってしまったんですか」
ざっ、ざっ、と草履が砂利を擦る音だけが夜に響く。
高杉さんは前を向いたまま答えない。だが、怒ってはいないようで少し安堵した。
静かな夜道に沈黙を守っていた高杉さんが、そうさなァ、とぽつり声をもらした。
「…………俺が、あの世界を許せなかった。ただ、それだけだ」
包帯で隠れた左目しか、私からは見えない。
その人も、また不思議な雰囲気を纏った人だった。
夜風に吹かれ金の蝶となって黒い空に羽ばたいていきそうな、そんな人だった。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時