ページ ページ12
「テメェこそ、俺を叩っ斬らねェのか」
「ばーか。こっちに来て攘夷も真選組もあるか。それに言ってんだろ、馬鹿なことしたらシバいてはやるけど、叩っ斬って欲しいならあの腐れ天パんとこ行けって」
「馬鹿のツラ見にいくなんたァ願い下げだ」
そういう2人からは殺気も何も感じられなかった。
「なァA…………やっぱりテメェは俺と来い」
「まぁた始まった。冥土への道なんてやなこった。死んだら絶対地獄行きだし。お前も、私も」
「クックック……違いねェ」
喉のくつくつと鳴らして笑うその人は楽しそうだ。
Aのヤク◯トを飲む口も弧を描いていた。それは私達には見せないような表情だった。
「…………お前と落ちる地獄なら、悪くねェかもな」
「お一人様、地獄へご案内でーす」
「相変わらず可愛くねェなテメェは」
「可愛さを求めるならヅラに求めろよ。にゃんにゃんしてくれるかも知れねぇぞ」
「気色の悪ィこと言ってんじゃねェよ」
高杉さんと目が合ったAは、笑った。それはもう、子どものように屈託のない曇りひとつない笑顔だった。
それを見て高杉さんも頬を緩める。私達は完全にこの場には邪魔者だった。
「…………行こうか」
私達は目配せをし、A達に背を向けた。これ以上は野暮だろう。
「晋助」
笑い収まったAが、高杉さんの名前を呼んだのが聞こえた。
「ごめんな」
その一言は私達をその場に留まらせるのに十分だった。
Aが謝った。高杉さんはAを見たまま動かない。
だが、少ししてその手はAの頭に伸びていった。
「……テメェにそれを言われる義理はねェ」
そのまま高杉さんはAの頭を撫でた。静かな時間が流れる。
おい、と声をかけた高杉さんはAの顔に触れた。
「…………面倒くせェ女だ」
高杉さんはAの頭を自分の胸に引き寄せ、撫でた。私達からはAの顔は髪の毛で見えない。
子供をあやすように、Aを撫でるその手つきは優しかった。
144人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時