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どうにかして2人のことを覗く手段はないかとみんなで知恵を出し合った。
Aは視線にすぐに気づく。だが、ここで止める私達ではなかった。
「Aはすぐに視線には気がつくから見るのも無理じゃない?」
「確かに。どれだけ遠くにいてもバレるよね、きっと」
「傑さ、視覚と聴覚共有できるような呪霊持ってねぇの?」
「冥さんでもあるまいし、そんなのないよ」
「こういう時に使えないな夏油」
使えない、と硝子から理不尽な酷評を受ける。そんな呪霊、あるなら欲しい。
「いや、わかんねーぞ。ちょっと遠くから徐々に近づいていってやろうぜ」
今の私達は紛うことなきクソガキだと思う。
本人は嫌がっているのに、そのプライベートな話を盗み聞きしようとしているのだから。でも誰1人、やめておこうだなんて言わなかった。
廊下を出て、Aが消えていった方向に向かって歩く。
こっちの方向には出口しかない。外に出たのだろうか。
初春、凍えるように寒かった冬を溶かすような暖かい色をした桜が舞っていた。その桜の下に座り込むふたつの影。
私達は息を潜めてその影に近づいた。
「晋助は、やっぱり桜が似合うよな」
「お前もそうだろ、A」
その男は、Aに手を伸ばし、Aの頭についた桜を指で摘み上げた。
「……なんか、めっちゃいい雰囲気だけど。大人の恋ってやつ?」
「そうとは限らないだろ。あのAだぞ」
「ないない。あいつがそんな綺麗な恋心もちあわせてるなんてずぇってぇーない」
少し離れたところで、私達はこそこそと会話していた。
Aが私達を気にする様子はない。だが気づいていない、というのは考えづらい。
「ほんとなんでこっちに来たんだよ。世界ぶっ壊さなくていいのかよ」
「……テメェがいねェ世界ぶっ壊しても、意味がねェ」
「…………え、まさか私を追ってこっちの世界ぶっ壊しにきましたとか言っちゃう系??やめなさい晋ちゃん!!これ以上黒歴史を増やさないで!!」
「誰の人生が黒歴史だ」
「そこまで言ってねぇよ」
この人がAがたまに馬鹿にしてる高杉さんじゃないかと推測する。
確かにAより少し背が低かった。
それを言ってしまうと、今度こそ殺されそうだが。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時