電車では男にも女にも注意しろ(五条) ページ2
寒い寒いと傑と言いながら言った先で、Aは車を見ながら突っ立っていた。
車ん中はあったかいって期待してきたってのに。
「おいおい、こんな寒ぃ日になんで車の外にいんの?ついに脳みそまで凍ったのかよ」
「脳みそが年中冬眠してんのはお前だろ。車が凍結しちまってエンジンがかからねぇんだよ」
「あ”?」
「凍結?」
傑が聞き返すと、Aは簡単に状況を説明した。
Aはできる限りの対処を施したようだが、それでもかからなかったらしい。
それはもう新しい車を用意するしかねぇだろ。
Aは夜蛾先生にそのことを伝えるために渋々といった様子で電話をかけた。
「車、凍結しちゃってエンジンかからないんですよ」
今は真冬も真冬、気温は一桁で俺たちは寒さに凍えていた。
『他の車は全て出払っている。……すまんが電車で行ってくれ』
「だってよー。お前ら勝手に頑張れー」
「は?!こんなクソ寒い日に地獄だろ!!」
『A、お前もだ』
「ん?……あ、あれ、聞こえないな……夜蛾さん、ちょっと電波が、」
『給料抜きにするぞ』
「アム◯、行っきまーす!」
「お前は宇宙でもどこでも行けよ」
夜蛾先生との電話を切ったAはあからさまに不機嫌だった。
給料なくてもお客サマとかがいるから困らないだろ、こいつ。
寒い寒いとAは足早に俺たちの前を歩く。
幸い任務地はとても遠いというわけでもなく、電車で5駅ほどの場所だった。
「電車乗るのなんて久しぶりだなー。なんでこんな混んでんだ。お通ちゃんのライブ会場より人多いじゃねぇか」
「電車はいつもこのくらいだろ」
「観光客も多いからね」
俺は電車の出入り口の隅に立つ。
電車内は暖房が効いていて、冷えた俺たちの体を温めた。
俺たちも大体任務は車で向かうため、電車は久しぶりだった。
前乗った時も、このくらい混んでいたなと思い出す。
俺は後ろに背を預け、掲示板を眺めた。
混んでいるから俺の方を向いて立つAとの距離も近い。
Aが俺の方に少しよろけた。そして俺の服をぎゅっとつっかんだ。
Aのことを見下ろしたが、Aの顔は俯いていて見えない。
おい、そんなに強く掴んだら皺になるんだけど。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月14日 12時