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コンコン、とノックをする。
部屋から音が聞こえる気配はない。
起きるまでノックしてやる、とノックしていると10秒後ぐらいにガチャ、と扉が開いた。

「おい、あいつ引き取ってく、…………」

顔を出したのは眉間に皺を寄せて明らかに寝起きの不機嫌そうな顔をしたA。
だがその姿に問題があった。
薄くて長いキャミソールの肩紐が片方肩からずり落ちている。
キャミソールの下にはなにも着ておらず、その形は透けていた。
しかも下も履いてなさそうだ。

少しボサついた髪をAはかき上げた。
ぞくぞくと全身のうぶ毛が逆立ちそうな、大人の、女の色気が漂っている。

「…………お前か。ご購入いただいたヅラの返品及び交換は一切受け付けておりませんのでお引き取りやがれください」

勢いよく扉を閉めようとした寸前の所に足を挟んで阻止する。
そのまま俺は扉に手を摺り込ませ、こじ開けた。

「…………あいつをどうにか、しろ」
「どうにかしろって、どうにもできねぇよ」

Aは壁に寄りかかって腕を組んだ。
キャミソールがたるんで乳房が見えそうだ。
銀髪男がいた時もこんな格好だったのだろうか。
この対応はガキだからと舐めてやがるのか、通常運転なのか。

「なにが問題なんだ」
「……あいつのせいで俺が寝られねぇんだよ」
「あぁ……あのキモい寝方な……」

あのキモい寝方が伝わったようだ。
Aが眉間の皺を片手でおさえた。
Aもあの寝方を見てきたのだろうか。

「んなこと言ったってなぁ…………あいつ一度寝たら起きないからどうにもならんぞ」
「こっちまで俺が連れてくるからお前の部屋に置け」
「……無理。あいつになにしてもいいから頑張って寝てくれ」

ひらひら手を振って俺に扉を掴まれた状態で、Aは自分のベッドの方に戻っていった。
扉開けっぱなしにすんな。少しぐらい危機感とか持ちやがれ。

「勝手に扉閉めて帰ってくれー。私は眠いんだ」

布団を被って俺に完全に背を向けた。
こいつは一体どんな神経してんだ。

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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時

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