大人げない大人には常に気をつけろ(五条) ページ33
ようやく涼しくなってきた今日この頃、Aは体術訓練をしている俺たちの前に現れた。
「なんでここにいんだよ」
「来たくて来たんじゃねぇよ」
相変わらずAはシャツの胸元を大きく開けている。
夜蛾先生に派遣されて来たらしい。
歩き方からして気だるげさがこっちまで伝わってくる。
「本当はずっと行けって言われてたんだけどな、暑いの嫌だからこそこそとサボってたんだよ。それがバレた」
「お前本当よくクビになんねぇよな」
ふらふらと歩いてきて、Aは硝子の横にどしりと腰を下ろした。
全くやる気も覇気もない。
「A、少し近接戦の手合わせしてもらいたいんだけど」
傑がAの方に歩いていく。
やる気ねぇやつに頼んでも無駄だろ。
「そうだなぁ、前から言ってたもんな」
Aはふらっと立ち上がった。腰に携えていた木刀を取り出す。
本当にやるつもりなのか。
「今回は手加減しないからね」
「ガキに手加減されちゃあ、泣いちまうよ」
お互い真ん中まで歩いていき、向かい合う。
硝子が興味深そうに見ていた。
俺は、さっきまでAが座っていたところに腰掛けた。
2人の目が合い、示し合わせたようにそれは始まった。
「…………すごい」
硝子がぽつりと呟いた。
Aは完全に傑の繰り出す攻撃に全て対応していた。いや、あれはむしろ傑が対応していると言った方が正しいのか。
2人は速かった。
攻撃を仕掛け、そして間髪入れずに次の攻撃を繰り出す。それをAはふらふらと躱し、傑はそれを受け止めていた。
Aは決して傑に捕まらなかった。
避けた反動を利用して体を捻り、強烈な一撃を傑に打ち込む。滞空中も傑の攻撃を交わす身のこなし。その全てが洗練されていた。
そしてAは自ら傑に触れにいき、その懐に入り、反撃してきた腕を木刀で弾かせ、横腹に蹴りを入れ込んだ。
傑はそのまま蹴られた方に吹っ飛ばされていった。
「Aが……夏油を蹴り飛ばした…………」
硝子は目を丸くして蹴り飛ばされた傑の方を見ていた。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時