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Aがまた大きいため息を落とす。
「気にするな。馬鹿が馬鹿やってるだけだ」
「ほら、ガキは散った!これからAは銀さんと熱い夜を過ごぶっ!」
「お前は帰ってからマゾっ子さっちゃんと熱い夜を過ごしとけ」
Aの背後から忍び寄り、銀髪男はAに抱きついたが、顎を思いっきり殴られていた。
それでも銀髪男はその腕を離すことはなかった。
「もー照れちゃってー」
「離せコラ。おいなに勝手にドア閉めて、」
がちゃん、と銀髪男によって締められたドアは丁寧に鍵までかけられた。
Aと銀髪男の声がドア越しにかすかに聞こえる。
「……大丈夫かな、A」
「…………なんとかするっつってんだし、大丈夫だろ」
Aは完全に拒否してたし、Aのことだから何とかするはずだ。
ゆっくり歩き出した時にどん、とAの部屋の方から鈍い音が聞こえた。
「無理矢理襲われてない、よな……?」
傑が心配そうに振り返った。
Aからあの男とは昔からの腐れ縁だと聞いていた。そんな奴らの間に割って入るのも、無粋だ。
俺は振り返らず、再び歩き始めた。
「A、本当に元の世界に帰ると思うか……?」
俺の横まで歩いてきた傑が静かに独り言のように俺にきいてきた。
銀髪男もそんなことを言っていた。
連れて帰る、と。
「…………さぁな、明日になればわかんだろ」
静まり返った夜の廊下を俺たち2人は黙って自室まで歩いた。
次の日、Aがいつも来る自習の時間はなく、朝からAを見かけなかった。窓の外を見やる。
俺たちは自然とその姿を探していた。
「…………A」
「よー、……どうしたんだお前ら。バケモンでも見たような顔して」
Aは普通に俺たちの目の前から歩いてきた。
至っていつも通りのAがそこにいた。
Aにべったりだった銀髪男はもういない。
「ん?寝ぼけてんのか?おーい」
その代わりに、Aの白い首筋には赤い痕が一つ付いていた。
その真実を、俺たちはまだ聞かないでいる。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時