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そう考えると、Aは私達には優しい方だし、子供のような態度も見せるな、とふと思った。
「俺にも食べさせてくれるんだよね?!」
「そんなに食いたいならそのうるせぇ口チョコでパンパンにしてやるよ」
「え、ちょっと、想像してたのと違う!!さっきのやつみたいにあ”ぁ”ぁぁああ!!」
Aは10個全部一気に銀髪の男の口に詰め込んで席を立った。
……窒息しそうだけど。
「食ったんなら行くぞーお前ら。そこの汚い天パは放っておいていいからー」
Aはさっさと会計を済ませ、本当に銀髪の男を置いていった。
あの男に対しては優しさのかけらもないな。
「あいつ、マジでいいの?」
「どうせすぐ来る。あいつに甘くしたらダメなんだよ。すぐつけあがってくるから」
「……大変だったんだね」
Aの言葉からは今までの苦労が垣間見えた。
あの銀髪の男に散々手を焼いてきたんだろうな。
急に独特なアナウンス前の音が耳に届く。
『ご来店中のお客様に迷子のお知らせをいたします。銀色の、きゃあ!』
『銀さんがこのデパートのどこかで待ってます。妻のAは銀さんを探し出してください。銀さんはAの愛のキスを待ってます』
奴だった。
Aをちらりと見てみると、無表情だが確実に怒りを露わにしているAが見えた。
あの人、終わったな。
「……あいつすげーわ」
「……あれが、愛なのかな」
無言で突き進んでいくAに私達もついていく。
完全にキレてる。
「お、早いじゃん。さすがA。そんなに銀さんが恋し、」
「…………そんなに愛が欲しいならくれてやろうじゃねぇか。一発で永眠できる愛の斬撃をなァ!!」
「A?!ちょっと?!ギャァァァアアアア!!!」
その地獄のような光景を止めるものは誰もいなかった。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時