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「ん、ほろ苦いのがなかなかいいな。ここのコーヒーもなかなか美味いぞ。ブラックだが、飲むか?」
「……少しだけ」
「別にただの美味しいコーヒーなら味見しなくて良くない?!」
野次を飛ばしてきたのを無視してAはそのアイスコーヒーを私に渡してきた。
銀髪の男の視線が突き刺さる。正直、飲みづらい。
Aは気にせず私のチョコドリンクをもう一口飲んだ。ドリンクに突き刺さっているチョコを見て、それを指さして私を見てくる。
欲しい、ということだろうか。
私が少し笑って頷けば、Aはそれを引き抜いて私の方に差し出してきた。
「え」
「早く。溶ける」
「なっ……!!」
斜め前に座る銀髪の男がすごい顔をしてこっちを見てくる。
ずんっと私の口元にチョコを寄せられて急かされ、私はもう口を開けるしかなかった。
小さく口を開けると、チョコが押し込まれる。
かじれ、とAに言われて言われるがままチョコを噛みきった。
そのままその残りはAの口に入っていった。
「んー、これも同じカカオ度数だな。悪くない。いいのあったら買って帰るか」
ありがと、と返されたドリンクを私は呆然と見つめることしかできなかった。
口で溶けるチョコも味がしない気がする。
「A?!いつも俺がどんだけ頼んでもあーんとか絶対してくれないよね?!なんでこいつにはするんだよ?!」
「はぁ?お前は下心しかないからだろうが。チョコの味も確かめたかっただけだ」
「俺チョコ10個頼んでるんですけど?!」
「私の金でな。それに、お前の食うと後からなんかたかられそうだし」
「そ、そんなことするわけないじゃ〜ん」
「目ェ泳いでんぞ腐れ天パ」
Aの銀髪の男への対応は慣れている。
しかもとても冷たい。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時