人はそう簡単には変わらない ページ20
高知までの旅行には収穫はあった。
おりょうちゃんがこっちでは坂本の妻になっていたのには驚いた。
私の知ってるもじゃもじゃ頭はあんだけ拒否られてるのにな。
3泊4日といえど旅行はやはり短いもので、一瞬のうちに過ぎ去っていったように感じた。
そしてまた、私たちはこの教室に戻ってきているというわけだ。
「なんでまだあぢーんだよ……」
「A…………本当にクーラー、ついてる……?」
「ついてる、しかも22度…………それでなんでこの部屋そんなに暑いんだ……」
「A…………保健室……」
「硝子、避難しようとしなーい…………行くなら私も連れてってくれ」
「お前ホントに仕事する大人かよ……」
私たちは教室で溶けていた。
下敷きで扇いでいる傑と、机でぐったりしている悟。そして、もう席にはおらず扇風機の前で涼む硝子。
私たちは全員やる気がなかった。
自習しろという言葉さえ出す気力がない。
急にザザッと教室のスピーカーから雑音が流れた。私たちはのそりとそちらを向く。
『高専内に侵入者が出た。悟、傑、今すぐ捕縛に向かえ。A、お前は職員室に来い』
「はぁ〜?またかよ!こんな暑い日に嫌なんだけど」
「侵入者…………Aの知ってる人だったりして」
「んなわけねぇだろ…………お前ら、さっさと行ってこいよ……」
私が教室の扉を開けると、そいつは立っていた。
予想もしていなかったそいつに私は目をこれまでにないぐらい見開いた。
「…………ぎんと、」
その名前を私は最後まで紡げなかった。
目の前のやつに、銀時に、強く抱きしめられていた。
「Aっ…………」
強い力だったが、同時に脆いものを包み込むような抱擁だった。
なぜ……ここにいるんだ、銀時。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時