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座るならって、私はいいと言ってないんだけど。
食べづらいし。
「ちょっと、A。退いて欲しいんだけど」
「頼むよスグるもん〜。ケツも腰も痛いんだよ〜」
「スグる、もん…………っふ……ふふっ……」
「……その呼び方もそろそろやめて欲しいな」
硝子がツボにハマったのか震えながら笑いを堪えている。
切実に退いてほしい。
少し無理矢理にでも退いてもらおう。Aのお腹を両手で掴んでずり下ろさせようとした。
「お願い、傑。ちょっと胸揉んでもいいから」
その言葉に思わずバッと両手を離してしまった。
それを見逃すはずもなく、Aはすかさず定位置に戻った。
もう頑として動かない気満々だ。
「傑…………こいつの胸揉みたいの？」
「っちが、私は、」
「私も揉みたい」
「硝子は温泉で思っきし揉んだだろうが」
やっぱりあの時揉んでたのか。…………じゃなくて！
あの時、咄嗟に手を離してしまったが、あのタイミングじゃ私がAの胸を揉みたいみたいじゃないか……！！
「あれれ〜傑ぅ〜耳赤くな〜い？」
「傑照れちゃってんの？可愛いとこあんじゃ〜ん」
悟と汚いやり口のAがにやにやと私を見てくる。
硝子は携帯を構えてきた。本当にやめろ。
「あ、電気消えた」
写真が撮られたか撮られてないかのところで、ちょうど照明が消えて辺りが真っ暗になった。
硝子が不満そうな声を出した。傑の顔見れねぇ、とAが嘆いている。
私は花火に救われたらしい。
ひゅぅー、と言う音を立てながら花火は上がり、夜空にそれは見事な大きい花を咲かせた。
「おおぉー」
「でかいね」
「真冬に見た歪な花火を思い出すな〜」
３人は花火を見上げて、もうそれに魅入っていた。花火を見るのは何年振りだろうか。
不意に私の手が触れられた。はっとAを見るとその口元は妖艶に歪められていた。
「揉みたいんだろ？」
花火の音に紛れて私にだけ小さく届いた低く艶のある声。
掴まれた私の手がそっと、Aの胸に当たった。
柔らかい、という感想だけが頭の中に流れて、思考がストップした。
鼓動を感じる。これはきっと、Aのものじゃない。
Aが私の手を離した瞬間、私はそこから手を離した。
花火の爆音で聞こえないのをいいことに、花火に照らされながらケラケラと笑うAを私は静かに睨みつけた。
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作者名：フルーツパンチ侍 | 作成日時：2023年9月2日 4時
