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Aが太客にならないか、と言ってきた言葉が頭の中に蘇る。
「…………お前のお客サマって、何してんだよ。何のために必要なんだ」
「んー?……悟がそれに興味を持つには、早すぎるな」
そうやって、Aは肝心なことはなにも言わず、ガキだなんだと理由をつけてのらりくらりと逃げていく。
それが大人の対応ってやつかよ。
「ガキだからどうとか言って理由つけて逃げてんじゃねぇよ」
Aはやっとこっちを振り返った。夜に妖しく光る黄色い瞳に俺は射抜かれた。
「……下劣な男が嫌い。だから、そいつらから情報も金も奪い取って利用してやる。取り入るためには何だってする。なにしてるかなんて、悟は大体わかってるだろう?」
Aは俺にゆっくり歩み寄り、鼻がくっつくほどまでに顔を寄せた。
ごくり、と俺は唾を飲み込む。
ふーっと息を吹きかけられると、甘い煙が顔の周りに充満した。
煙たい。
少し咳き込む俺に、その黄色く光る瞳が細く歪められた。
「っは、ガキはからかうもんじゃないな。面白くねぇ」
「っくそ、ババア!!俺のご尊顔になにしてくれてんだ!!」
ケラケラと笑うそいつを睨みつける。
それは、少し久しぶりに見た顔のように思えた。
「悟はそんなのに興味を持つ前にもっと遊んどけ。将来、私みたいなのに引っかからないようにな」
「引っかかんねぇよ、お前みたいな女」
そんなこと言って引っ掛かったら目も当てられないぞ、なんて悪い笑顔を見せてくるAを見て呆れる。
さっきまでの珍しくちょっとしおらしかった女はどこに行ったんだ。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時