酔ってる奴の言う事は大概デタラメだが一理ある時もある(五条) ページ1
女将に酒をついでもらったAの機嫌はすっかり直っていた。
「ここの酒は女将についでもらって、より美味くなるんだろうなぁ」
「うふふっ、全てお側でついで差し上げたくなりますねぇ」
猫かぶり全開だ。
俺はそのAを静かに見つめていた。
「お側にお付きしたいのはやまやまですが、私はこの辺でお暇させていただきましょうねぇ」
女将は俺に向かってにっこりと笑うと、頭を下げて、部屋を出ていった。
なんだあの女将。
「お前ら、なるべく敵は作るんじゃないぞ」
Aが日本酒をあおりながら、俺たち3人の顔を見て静かに言った。
物欲しそうに見ていた硝子の視線に気づき、Aは自分の持っていた小さいグラスを硝子に持たせた。
そして、一杯だけな、と言いながら小さいグラスに溢れそうなほどなみなみとつぎやがった。
いやダメだろ。
一気にグラスを傾けた硝子にAは調子よくいい飲みっぷりだ!と笑った。
止めろよ27歳。
Aは笑いながら俺らを見回した。少し酔ってるようだ。
「世の中、当たり前だが敵がいない方が生きやすい。無闇矢鱈に敵なんて作るもんじゃない。人たらしになれよ、お前らは」
「人たらし……」
傑がぼそっと呟いた。
そうだ、と日本酒をあおるA。
にっと少し悪そうな笑みを俺らに見せた。
電話口での喋り口、女将が本当に嬉しそうに顔を緩めるその振る舞い、Aはその“人たらし”と言われるに相応しかった。
「さて、私はそろそろいかないと。お前らはゆっくり食っとけ。大人しくしてろよ」
俺達3人の頭を雑に撫でて、Aはその場を去っていった。
食事は綺麗に全て食べ尽くされていた。
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月2日 4時