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ううぅぅ、これじゃ『いつもより変です!何かありました!』と言っているようなものじゃないか。夏油くんに変に思われたらどうしよう、と不安でいっぱいになりながら、それでも視線を合わせられず、右往左往させてしまう。
夏油くんは訝しげにこちらを見ていて、まずいなぁこれはまずいなぁ、と冷や汗がダラダラ出てくる。
そして彼がもう一度私の名前を呼び掛けたとき。
ガラッと扉が開いて。
「おーはー」
めちゃくちゃ眠たそうな五条くんが教室に登場した。
「ごっ、五条くん、おはよ!」
「おー、なんか元気だな」
「今日も元気だよ」
いいことじゃん、俺は眠い、と五条くんが大きなあくびをする。私は教室の変化を利用してそそくさと自分の席に戻り、授業の準備に取り掛かった。
「硝子ちゃーん!一時間目なんだっけー!」
「知らねー」
隣から視線を感じながら、それに気が付かないふりをして、この時間をやり過ごした。
のだが。
「A、ちょっといいかな」
「…………ハヒ」
名指しで呼び出されてオワタ。
抵抗することも出来ずに言われるままに夏油くんに着いていく放課後。
絶対に不審に思われたし私の様子がおかしいことは明白だし、彼が放課後まで逃がしてくれたのは優しさだと思う。
冷や汗をひたすらに流しながら彼の数歩後を歩き、どうしよう、どうやってこの場を切り抜けるの……とそのことばかり頭を駆け巡った。
「今日、少しおかしいように思えたんだけれど」
私は何かしてしまったかな、と夏油くんが足を止め、私の方を振り返った。
じぃと見つめられ、ぴ、と動きが止まる。
「な、に、もしてないです」
なんでこうも私は嘘が下手なのか自分を恨みたい。
めちゃくちゃ不自然な方向に視線を全力で逃がして上ずった声で返してしまい『あかーん』となる。
こんな調子で夏油くんが『はいそうですか』と見逃してくれるわけがない。
どうする、どうする、どうする。
「……昨日」
と、そう言われビクッと身体が跳ねた。
顔が強ばって、昨日の記憶が甦る。
『好きだよ』
甘くて優しい声。
「……う、ぅ」
どうしようもない。だって、そんなの。
思い出したら顔が熱くなる。
「……やっぱり、起きていたんだね?」
「……ちょっとだけ、起きてました、最後らへん」
白状するしかなかった。だって逃げ道ないもん。
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徳永(プロフ) - 戻ってきてくれて嬉しいです‥!!相変わらず最高です (10月27日 16時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作成日時:2023年9月27日 17時