月に叢雲、花に風【呪術廻戦/五条悟】 (ページ6)

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『折角だし、少し話さない？』

そう言ったAはベランダの手すりに手をかけ、
身体を横にずらした。
隣へ来い、ということだろう。

五条はAの隣へ移動すると、手すりに肘を付いた。
先程のパニックは幾らか収まった。

『今日は満月だよ』

言われて初めて気づいた。
道理で明るい訳だ。

『ていうか悟、なんか大きくなったね』

久しぶりにその声で呼ばれた自分の名前に、
少しばかり嬉しさを覚えた。

｢そりゃ、高二の時に比べればデカくもなるよ｣

『そりゃそうか』

｢12年も経つからね｣

『そんなに経つのかー』

｢…Aは変わらないね｣

『うん』

少しの間沈黙が流れたあと、
Aが控えめに口を開いた。

『……元気、だった？』

その質問に言葉が詰まる。
元気がなかった訳ではない。
しかし、Aのことを含め色々なことに踏ん切りをつけられている訳でもない。
考えがまとまらないまま、言葉を紡ぐ。

｢……色んな事があった、Aが居なくなってから｣

『うん』

｢今でも夢に見るんだ…Aのこと｣

『そうなの？』

｢夢の中で、僕は花の名前を知りたいんだけど、Aはいつもはぐらかして教えてくれない｣

『花って』

｢あの青い花｣

『そっか笑』

突然笑ったA。
五条には今の会話のどこに笑いのポイントがあったのか分からなかった。

｢なんか変なこと言った？｣

『ううん。花の名前は…今度教えるね』

｢今度？｣

『うん、今度』

｢じゃあ、その時を楽しみにしてるよ｣

『そうして』

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