【ツイステ】私と教育係 (ページ12)

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《第十話》ページ12

『……ここは』

目が覚めたAは起き上がってあたりを見渡す

白を基調とした清潔感のある部屋、見覚えのある天蓋

どうやら家に帰ったようだった

『助けて……カリム！』

「……おう今来てやったぜ」

『彼(カリム)が助けてくれたのかな』

ズキズキと痛む頭を押さえ、倒れる前の記憶を辿る

でも気がかりなことが一つ

『(でも私が聞いた声はカリムよりも低かったような)』

「お目覚めになられたんですね」

『(そう、こんな感じの低音……)』

＿＿＿＿え？

そこでAは部屋に他に誰かいることに気づいた

編み込みのある黒髪が特徴的な少年

つけているアクセサリーからこの家の者という事がわかる

「ご気分はいかがですか？」

『……お気遣いありがとうもう大丈夫』

少年はポットから茶をトクトクと注いでくれる

「主治医からの薬です毎食後にお飲みください」

『分かった』

「では、失礼します」

業務連絡を終えると少年は部屋を出ていこうとする

『待って』

何を思ったのかAは彼の袖を掴んで引き止める

「なにか、ご用でしょうか？」

少年は振り向いてAの方を向く

その顔は全く渋々といった様子はなく

むしろなぜ自分を引き止めたのかという興味が顔に表れていた

Aは口をモゴモゴとさせると、意を決したかのように口を開く

『た』

「た？」

少年は思わず聞き返す

まさか聞き返されるとは思わず、Aは肩をビクッと震わせる

慣れない対話

それでも伝えたいという一心がAの口を動かさせていた

Aは固くシーツの裾を握ると、残り僅かな勇気を振り絞る

『た、助けてくれて……その……

……ありがと』

た、から始まる文言は何通りもある

Aから発せられたソレは、少年が予想していたものより

遥かにシンプルで心地良いものだった