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暑い 暑い夏の夜だった。
鳴く蝉の声が鬱陶しくて。
滴る汗が 模様を描いていく。




「熱ィなー」




いつもだったら 真一郎と2人歩く道。

絶賛喧嘩中だった。
原因はなんてことないことで
アイスの取り合いとか。


「ダッツ買ってきたし、
これ許してくんなかったら絶交だワ」


深夜 先程追い出されたばかりのバイク屋に戻る。


「は…?






____な、にこれ、」


バイク屋一帯に立ち入り禁止テープが張り巡らされ、
入口は見事に壊され、鳴り響くサイレンの音、
人混みを掻き分ければ 床には血の跡があって。


後から聞いた。


弟の万次郎の友達が 殺したのだと。
怒りもあった。悲しみもあった。苦しみもあった。





それでもなぜか 涙は出なかった。



「A…」
「放っておいて」



自分でも自分が嫌になるほど、泣けなくて。
自分はこんなにも薄情な人間なのだ と笑った。


そして 真一郎の死んだ その日、




「…寒いなぁ」




君の温度に触れてみたくて、
その鋏を自分の喉に当てがった。



2003年8月13日 楯山A 自 殺






暑い 暑い夏の夜だった。
鳴く蝉の声が鬱陶しくて。
滴る汗が 模様を描いていく。



「急がないと…っ」





真一郎が死ぬ夢を見た。





しかも2回。

夢だとは思えないほど、それはリアルで。


失われていく体温。べったりと染み付いた血。
浅くなる呼吸。伸ばした手は 届かなくて。


「間に合え…!!!」


意味がわからなくて。理解できなくて。

震える足を叩いて バイク屋に走る。



「は…?








____う、そだ、」



動かない真一郎に、傍に立ち尽くす少年2人。
溢れ出す血溜まりから 目が 心が 離れない。


それでもやはり、涙は出なくて。





「この先 どんな地獄が待ってても
オレは最後まで一緒だから!!」





巫山戯るなと思った。




わたしだって 真一郎が生きていてくれるなら、
地獄にだって行ったのに。

鳴り響くサイレンの音に 静かにその場を去る。


そして 真一郎の死んだ その日、




「…夢だったら いいのに」




目が覚めて いつも通り君が笑いかけてくれる、
そんな明日を思い描いて わたしは瞼を閉じた。



2003年8月13日 楯山A 生存







2003年8月13日 楯山A 死亡


2003年8月13日 楯山A 生存


2003年8月13日 楯山A 逮捕


2003年8月13日 楯山A 死亡
2003年8月13日 楯山A 銃殺
2003年8月13日 楯山A 生存
2003年8月13日 楯山A …

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作者名:!!! | 作者ホームページ:http:s//  
作成日時:2021年9月2日 23時

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