風味絶佳 (ページ25)

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また食べに行く、その言葉通り、本当にジフンさんは週一くらいのペースで食べにきてくれるようになった。

元々、ブランチの微妙な時間によく来てたのが、昼夜問わず、必ずあのマフラーをして来店してくれるのだ。

「ソラ、小人くんが来てるぞ。」

その言葉に振り向けば、寒さに負けじとずいぶん着込んだジフンさんの姿。

「だから、ジフン、ですって！」

おじいちゃんにそう答えながらゆっくりと笑うジフンさん。

何歳なのか、表舞台といえど、普段なにをしている人なのか。こうしてみるとなにも知らない彼だけど、おばあちゃんたちに揶揄われながらカウンターに座る姿はすっかり常連さんだ。

「この店、儲かってんの？」

背を向けてお皿洗いをしていた私に、すっかり敬語の抜けた優しい声で、もぐもぐ、食事中のジフンさんがふと、問いかける。

「儲かる、とかじゃないですよ。材料はほとんどもらったものとか育ててるものですし、お店自体も私たちの家ですから。」

「お客さんが頬いっぱいに食べてくれるのが、繁盛の秘密なんだぞ～」

そう続けたおじいちゃんに、俺のおかげか、などと言って3人で笑う。

おかわり、その瞬間はプライムタイムのようで、いつも少しだけたわいもない、そこら中におちているような日々の会話をする。

「ヒョンの鞄にラーメンをこぼした奴がいて」

「明日は雨が降ってからすぐ晴れるみたいだから虹が見れるかも」

「今日の撮影がめちゃくちゃ長引いて」

「俺、釜山出身だから、」

「いいことあったかって？いや、実は結構いいメロディーが思いついてさ」

明らかに私たちと住んでる世界が違うような、そんな単語を聞くこともあるけれど、深入りするのはなんだか違う気がして、疑問は空気と共に噛み砕いて飲み込む。