猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 弐 【文スト】

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太「Aちゃんは絵の世界に残ったのですか？」

皆もうすうす気付いていた。

乱歩は既に理由まで分かっている。

絵の世界から帰還したのは福沢と与謝野のみで、Aが戻って来ていないらしい。

与「、、、そうだよ。
妾もさっき社長から聞いたんだけどね」

躊躇いながらも与謝野が話し始める。

与「遊郭の絵の世界に『スイレン』のマスターがいるはずだから探して来る、ってさ。
妾は既に絵の世界から脱出してたから、ついさっきまで知らなかったんだけど」

福「三鷹花魁、あの世界の『狐』が私に致命傷を与えた後だったから、私の身体は消えかけていて止めることは出来なかった」

そして項垂れる2人。

着実に仲間は集まっているが、肝心のAがいない事態。

だが、そんな中でも太宰だけは嬉々としていた。

太「敦くん、国木田くん、賢治くん、あともう1人の計4人が遊郭の世界に行ったんです。
マスターを探しにね」

それって、と鏡花が目を見開く。

乱歩が楽しそうに目を細めて続きを言う。

江「5人でマスターの捜索にあたれば効率が良いし、見つけ次第みんなで一緒に帰って来られる。
その5人とマスターが戻って来れば、それで僕達の目的は達成される訳だ」

実は敦だけ別の世界に飛ばされているのだが、瑛藍と敦以外は知る由もない。

谷崎が小さく手を挙げて太宰に問う。

潤「遊郭の世界に行った『もう1人』って一般人の方ですか？」

太「いや、たぶんAちゃんのお兄さんだよ。
髪の色が同じだったし、何より顔立ちや声質がよく似ていた」

名前や素性を聞いた訳ではないから確信は持てないけどね、と太宰は付け足す。

マフィアも恐れる異能者『稲荷姫』、武装探偵社、特士の条野 A、そしてその兄。

状況はまさに混沌としている。

泉「現状の把握が出来ただけマシ」

与「そうだねぇ、今はそう思うしかないか」

女性陣の落ち着きを見て、谷崎も少し冷静になる。

ここで太宰が、探偵社の最終的な目的を確認する。

太「私たちの目的は、あくまで『マスターとAちゃん、福沢社長を解放してもらう』ことであって『稲荷姫』に勝つことではない。
社長は帰って来たから、あとはAちゃんとマスターだけだ」

「ああ」「分かってる」「はい！」「そうだね」

口々に賛同する4人。

江「『稲荷姫』と相対したら、ひとまず太宰に触れること。
異能空間に連れ込まれないようにね」

いいね？と念押しする乱歩に、5人が頷く。

勝負は始まったばかりだ。

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