猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 弐 【文スト】

76 （直接的な表現は避けたつもりですが、多少グロいかもしれません） ページ38

江「鏡花ちゃん、夜叉で天元を拘束。
谷崎、異能を解いて」

「「はい！」」

乱歩の指示通りに谷崎が異能を解き、それと同時に夜叉を出す鏡花。

背後に突然現れた夜叉によって、宇髄の身体の自由が奪われる。

宇「っおい、何すんだ！」

流石の宇髄も、両手両足を夜叉に掴まれていては、何の技も出せないらしい。

粉雪がやみ、『狐の鬼』の眼前に3人が現れる。

相変わらずの仏頂面、だが何処か悔しげな表情の鏡花が口を開く。

泉「救ってくれたのに、それに報いる事が出来なくてごめんなさい」

優しげな垂れ目を更に細めて谷崎が言う。

潤「この雪、僕の力なんです！
お騒がせして済みません！」

そして最後に、乱歩が優しく笑って言った。

江「色々とありがとね、天元」

思わず目を奪われる。

これほど美しく潔い笑顔を、宇髄は他に見たことがなかった。

鬼「何だ、何が目的だ、人間ども」

目の前に無防備に立っているだけの3人に、訝しげな視線を寄せる鬼。

鬼の懸念も尤もだ。

それも全て分かった上で、鬼を挑発する乱歩。

江「いやあ、深く考える必要はないよ？
さっさとお前に殺されたいだけさ。
だってお前、強いんだろ？」

生々しく赤い舌をぺろりと出して、嘲るように鬼が笑う。

鬼「ふん、そんなに言うのならお望み通り殺してやる。
何が狙いかは知らんがな、もう泣いて縋っても遅いぞ」

鬼の牙が、爪が、3人の肌を切り裂く。

身体の小さい鏡花はすぐに血が足りなくなり、早々に気絶する。

次は谷崎、乱歩にはまだ猶予がある。

江「天元、また会えたらその時は、 」

決定打。

鬼の鋭い爪が、鏡花と谷崎の腹を抉り取った。

鬼がそこへ喰らい付こうとした瞬間。

鬼「なっ、、、消えた！？」

2人は空気に溶け込む様にして消えてしまった。

一切の抵抗を見せずに『狐に大人しく奪われた』から、元の世界に戻ったのだろう。

さぁ、乱歩の番が来た。

大丈夫、覚悟はとうに出来ている。

乱歩は笑って目を閉じた。









役目を終えて『狐』も消え果てた。

この3人を殺す為に存在していたのだから、その仕事が終われば消えて当然だ。

だがこの世界そのものは消えない。

瑛藍が描いた絵が破られたり燃やされたりしない限りは存在する。

救うべき人間が消え、殺すべき鬼も消えて呆然とする宇髄。

宇「『また会えたらその時は、嫁も一緒に甘味処を巡ろう』か。
ははっ、良い甘味処探しといてやるよ」

乾いた笑い声を溢して呟いた。

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