猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 弐 【文スト】

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泉「どうして貴方がここにいるの」

肩で息をする谷崎に、至極真っ当な疑問を投げ掛ける鏡花。

潤「『稲荷姫』と遭遇して、絵の世界から出る条件についてのヒントを、貰ったんです！」

何とか伝えると、2人とも驚愕の表情になる。

江「天元の嫁に押し切られて寝ているうちに、そんなことが、、、！」

谷崎の『細雪』をよほど信頼しているのか、途端にふざけ出す乱歩。

鏡花は、いつも通りの乱歩さんだな、とホッとしていたりなんかする。

潤「てん、よめ、ねて？」

江「いや、こっちの話。
そんで、ヒントって？」

含み笑いのまま黒縁眼鏡を取り出す乱歩。

いよいよ本領発揮だ。

谷崎は、忘れないうちに慌ててヒントを伝える。

潤「えっと、たしか、、、
『狐に大人しく奪われろ』です」

狐に大人しく奪われろ。

何をだ、と鏡花は首を傾げる。

狐というのは、乱歩の予想通り、目の前にいる『狐の鬼』のことで良いのだろうが、、、

これだけでも乱歩さんなら分かるはず、と期待して乱歩を見つめる2人。

常人の脳では到底追いつけない速度で思考が展開される。

そして導き出された答えは、

江「、、、なるほどね。
絵の世界にそれぞれ1匹ずつ存在する『狐』、僕達の場合はあの鬼だ。
そいつに、大人しく殺されなければならない」

嘘だろ、と思わず呟く谷崎。

乱歩が間違える訳がないし、この場面で嘘を吐く筈もない。

江「奪われるのは僕らの魂さ。
ま、そんな非科学的なものがあるとは僕は思わないけどね」

泉「でも、宇髄さんが、」

鏡花はそこで口籠ってしまう。

宇髄さんは私達を守ろうとボロボロになっている。

昨日救われた恩もある。

なのに、その目の前で大人しく殺されると言うのも、と。

鏡花はそう言いたいのだ。

江「うん、そうだね。
『稲荷姫』は本当に悪趣味だ」

乱歩の涼やかな緑の瞳が光る。

江「でも、僕達は元の世界に戻らなきゃならない。
社長を、Aを、マスターを、助けなければならない」

僕達には、その義務と責任がある。

乱歩の言葉が鏡花の胸に染み込んでいく。

そう、彼等は武装探偵社。

出会ったばかりの絵の住人に情をかけていられるほど暇ではないのだ。

江「覚悟を決めろ。
僕達は今から天元に見殺しにされるんだ」

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