猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 弐 【文スト】

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李「なーんだ、面白い顔出来るじゃん。
女の人に守られてばっかりで、自分では何も出来ないお坊ちゃんなのかなって思った」

与謝野の眉がぴくりと動く。

2人とも、ペースの掴めない瑛藍を相手に、相当苛ついているのだ。

痺れを切らした与謝野が叫ぶ。

与「早く2人を返せってんだ！
煙に巻くのも良い加減にしな！」

それにも全く驚かず、くすっと笑う瑛藍。

そして与謝野と谷崎の顔をたっぷり眺めてから、驚きの発言をした。

李「申し訳ないけど、みんなを今すぐに出すことは出来ない。
一度中に入れた人は、条件をクリアしないと出られない」

谷「なっ、、、！」

2人はてっきり、瑛藍と上手く交渉すれば社長たちを返して貰えると思っていたのだが、そう上手くはいかないらしい。

異能の持ち主の瑛藍でも、一度中に入れた人は出すことは出来ないのだと言う。

中にいる人たちが自力で条件をクリアしなければ、外へは二度と出られない。

凍りつく2人の顔を覗き込んで、心底楽しそうな、悪い顔で笑う瑛藍。

そして、驚きの提案を口にした。

李「だから、2人にはヒントをあげる。
そのヒントを中の人に伝えに行ってよ。
このままじゃあつまらないから」

2人いるから丁度いいね、と勝手に話を進める瑛藍。

瑛藍の今の言葉から、与謝野は社長、A、マスターは同じ世界にいると推測した。

もしこの推測が正しいのなら、こちらにとってはかなり都合が良い。

都合が良いのだが、瑛藍の目的は依然、見えないままだ。

こんなことをして、瑛藍は何が目的なのだろうか。

李「おにーさん弱そうだから、人喰い鬼の世界に行って貰おう。
そんで、さっさと喰い殺されて貰おう。
お姉さんは頭良いしとても強そうだから、面倒なほうね」

なかなか心に来る言葉を放つ瑛藍。

『弱そう』『さっさと喰い殺されて』という単語が、谷崎の心に突き刺さる。

酷いこと言うなぁ、と既に半泣きだ。

面倒なほう、という言葉もかなり引っかかる。

人喰い鬼の世界でも十分に面倒なのだが、一体どんな世界なのか。

李「じゃあヒント言うね。
1回しか言わないよ。




『狐に大人しく奪われろ』




はい、以上！！！」

勢いよくそう言った瑛藍は、再びおもむろにメモ帳を開く。

与「狐、、、？
『稲荷姫』という呼称に何か関係があるのか、、、？」

谷「『奪われろ』、、、？」

呆然とする2人を置き去りにして、世界は回り始める。

金色の文字列が広がり、2人はあっという間にメモ帳に飲み込まれた。

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