渇望(ディオ) ページ4
おれは人間をやめた。石仮面を被り、ジョースター卿の血でおれは人外になった。不老不死の吸血鬼にだッ! 人間をやめるのに後悔はなかった。あるのは渇望だけだ。飢えといってもいい……おれはひたすらに飢えていたのだ。その為にはどうしても人間をやめなければならなかった。おれは、ジョナサン・ジョースターに勝利し、その存在を殺さなければいけなかったのだ。そうしなければ、おれはブタ箱行きだったからだッ! 退路などなかった……しかし、まさかあのジョジョが、あの食屍鬼街から例の東洋人、それに警官らを連れて戻って来ていたなど! 食屍鬼街でのたれ死んでいれば良かったものを…………ともかく、だから、おれは人間をやめるしかなかったのだ。
前に述べた通り、人間をやめたことに後悔はない。だが残念に思った。吸血鬼となっては日の昇る時刻には活動できまい。となると、おれは夜以外には彼女に会えなくなるだろう……いや、吸血鬼となったこのおれには関係のなくなった、些細なことなのかもしれんが…………。
『彼女』というのはおれが大学に通い始めてからの数ヶ月で恋人関係になった女で、名はAといった。名門貴族の一人娘で、王室とも決して浅くはない繋がりを持ち、ゆくゆくは結婚し財産も権力もおれが手にするはずだった。
付き合うまでたった数ヶ月、されど数ヶ月。自分を彼女に魅力的に魅せるためにおれがどれだけ試行錯誤し恋人という存在を勝ち取ったかッ……!
「ディオ様?」
ワンツェンの声で我に返った。顔をあげれば醜いゾンビどもがズラリと並んで跪いていた。
怪訝そうにこちらを見やるワンツェンにおれはサッと支配者としての表情を取り付け、何だと口を開く。
やり取りを交わしながら、つくづくおれはまだまだ未熟だと再確認した。そう思うのは癪だが、事実そうだった。少年時代に自分の欠点を再確認し矯正しようと努力してはきたが、幼い頃からの癖というものは中々治りそうにない。難しいものだ。それに、早く吸血鬼としての能力にも慣れなければならない。
このウィンドナイツ・ロットで、今度こそジョジョを殺す。そして、おれはそれを果たした時こそ真の支配者、夜の帝王となるのだ!
しかし、やはり少々惜しい。断じて後悔でも未練でもないはずなのだが、あの女の存在が惜しい__待て、馬鹿な、情でも湧いたのか? このディオが?
おれは頭を振った。くだらないことを考える暇はない。ジョジョがこの町に訪れる日は近いだろう……。
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とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます! (2017年12月12日 21時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…!更新がんばって下さい! (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます! いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください! (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます!更新頑張ってください!応援してます!他の作品も楽しみです!! (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とある決闘者 | 作成日時:2017年12月10日 22時