フリーズ(ディオ) ページ3
瞬きの間の一瞬を死が駆け抜けた。わたしの前に、わたしを庇うようにして立っていた大人たちの首と胴はいとも簡単に離れてしまった。
その様子はさながら庭園の手入れだ。邪魔な葉を枝を花を、鋏一つで断ち切るのだ。ぱちん、ぱちん、と躊躇など一欠片もせず。もっとも、その行動によって生じる斬首の音は後者ほど軽快ではなかったのだけれど。
金髪の恐ろしく美しい顔をした男は、怯えるわたしを見て嗤った。「かわいそうに、」男が口を開く。
「お嬢さん、麗しのマドモアゼル、君もこんな風にはなりたくないだろう？」
お前がわざとそうしたのだ、表面だけの憐みなんて不愉快だ。そう強く言える口があればと願わずにはいられない。わたしには先の大人たちのように、この男に対して反抗する勇気などなかった。
わたしはただ受け入れるだけだ。結果の良し悪しなど関係ない、わたしは全てを甘受する。そうすることでしかわたしは生きる術を知らない。わたしは思考停止している。
「君、永遠は欲しくないか？ 約束された永遠だ。十年後も百年後も、変わらぬ美貌を保つことができる。おれと同じ吸血鬼に君もならないか。おれと共に、悠久の時を生きようじゃあないか」
男は微笑んだ。先ほどの恐ろしさはすっかりと鳴りを潜め、そこには仮初めの紳士が一人立っている。人の良さそうな笑顔をしていた。優雅な動作で一礼して、どこからか赤い薔薇をサッと取り出してわたしへと差し出した。
わたしにはこの男が何を考えているのか手に取るようにわかった。それでも差し出された罠を拒否することはしない。何度でもいうが、わたしは思考停止しているのだ。如何に脳が、理性が罠であると叫んでいても本能は思考停止する。
勝てるわけがない、この誘いを断れば生き延びられない＿＿そんな第六感めいたものがはたらいて、その手を叩きつけることができない。脳が凍結されたようだった。いや、本当は熱いのかもしれない。脳味噌が沸騰して、あまりの熱さに冷たいと感じているだけなのかもしれない。結局どちらかはわからない。わたしは思考停止しているのだから。
だから、このわたしの思考は、頭のほんの片隅に残った哀れな残骸が思考しているにすぎないのだ。
「さあ、手を取れ」
名も知らぬ男は、そんなわたしに追い打ちをかけた。
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とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます！ (2017年12月12日 21時) (
レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…！更新がんばって下さい！ (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます！ いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください！ (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます！更新頑張ってください！応援してます！他の作品も楽しみです！！ (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とある決闘者 | 作成日時：2017年12月10日 22時
