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うそつき(ディオ) ページ1

辺りが暗くなり、すっかり寝静まったジョースター邸のとある一角。書斎でわたしは一人本を読んでいた。蝋燭をつけてしまうと光で誰かが気づいてしまうかもしれないと思ったので、微かな月の光だけで文字を左から右へと読んでいく。ページをめくる手に止まる気配などまったくなかった。
その時のわたしはすっかり読むことに夢中になっていて、周囲の気配に対し疎かになっていたのだろう。だからか、突然横から伸びてきた手を払いのけることはできなかった。



「こんな時間に読書は感心しないな、Aねえさん」

その言葉とともに、読んでいた本がぱっと奪われた。わたしは顔を上げ、音もなく現れた目の前の人物に驚愕する。
「ディオッ!? どうして貴方がここに……」
「不審な物音がしたから、賊でも入ったかと思ってね。けど違ったみたいでホッとしたよ」
そう言って微笑むのは、紛れもなくつい最近この家にやって来た義弟だった。淡い月光に照らされた姿はどこか儚さを感じさせている。澄んだブルーの瞳がわたしを咎めるように見ていた。
「ごめんなさい、余計な心配をかけさせてしまって……」
「いいさ、気にしなくても。それよりもぼくは、ねえさんと話せてとても嬉しいんだ」
「う、嬉しい?」

ディオがそうだよ、と頷く。けれどわたしは正直半信半疑だった。素直に喜ぶにはなんだかもやもやとする。どうしてだろう、普通こんな言葉言われたら嬉しくて飛び上りたくなるはずなのに。

そこで「あ」、と口から漏れた言葉とともに何故もやもやするのかを理解する。本だ。わたしは突然読書という至福の時間を邪魔されてしまったから、嬉しいと言われても微妙にしか感じないのだ。

じと、とディオの持つ本を見つめれば義弟はキョトンとした後合点したらしく苦笑した。
わたしは本の続きが気になって仕方がなかったが、年上のはずの自分が年下みたいに見える行為をしていることに今更気づいて赤面し顔を逸らした。

「ねえさん、」

顔を逸らしているから、ディオの表情はわからない。恥ずかしいな、と思っていると不意にディオがわたしの頰にそっと手を添える。その手はとても温かいものだった。
そのまま、ゆっくりとディオがわたしの頭を動かしていき、必然的に視線を合わせられる。その時、月が雲で隠れ月光が遮断された。ディオの顔が陰になる。



「すきだ」



唯一、歪につり上がった口元だけが見えた。

人魚姫(ジョナサン)→



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設定タグ:ジョジョの奇妙な冒険 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます! (2017年12月12日 21時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…!更新がんばって下さい! (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます! いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください! (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます!更新頑張ってください!応援してます!他の作品も楽しみです!! (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とある決闘者 | 作成日時:2017年12月10日 22時

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