魔王愛を捨てた復讐鬼 (ページ7)

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第七話ページ7

「結末に相応しい場所ですね」

英雄が死んだ倉庫だった。
成瀬がゆっくりと中に入ってくるのを芹沢は背中で感じた。
あえて入口には背を向けていた。怒りのあまり彼を直視するのが怖かった。

「最後の標的は、俺か？」
そう言うと芹沢はジャケットの後ろから拳銃を取り出し、真っすぐ成瀬に向けた。成瀬は向けられた銃口を静かに見つめた。ほっとした。すべて予定通りに進んだ。僕の復讐は終わりを告げる。

「あんたの復讐は、未完成のまま終わる。俺のせいで、たくさんの人が死んだんだ。親父や兄貴まで…。俺のせいで始まった復讐だ。だから、俺の手で止めるしかないんだ」

芹沢はあふれで溢れ出る怒りとともに強い恐怖を感じていた。成瀬を殺したいほど憎み殺してやると決めたのにも関わらず、声も手も震えていた。成瀬の顔を見ると怖くなった。成瀬はただ静かに銃口を見つめるだけだった。何も言わなかった。

拳銃に左手を添えて構えた。いまだ。早く撃つんだ。頭ではそう命令していても身体がいうことをきかなかった。震えが止まらなかった。拳銃を持つ手に力が入る。成瀬は両手で構えられた拳銃を見つめて心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。もうすぐだ。これで終わるんだ。その安堵からか笑みがこぼれた。

しかし芹沢はいっこうに成瀬を撃たない。両手は震えたまま引き金を引こうとはしなかった。どんなに待っても芹沢は自分を撃ってはくれなかった。成瀬は焦った。なぜだ。このまま殺してくれないと困る。でなければ自分の復讐は完成しない。終わらせてくれなければ困るのだ。

「…何を、迷っているんです？憎くないんですか。あなたは、たった一人の父親と優しいお兄さんを奪われた。そして、かけがえのない親友まで殺されたんだ。殺しても、飽き足らないほど憎いはずだ。違うか！…法律では、僕を裁けない。復讐のチャンスは今しかないんだ！早く殺せ！」

成瀬の声が倉庫に鳴り響いた。目に涙を溜めた芹沢が驚いて成瀬の顔を見つめた。成瀬も声を荒げた自分に驚いていた。動揺するな。落ち着け。そう言い聞かせた。無音が続いた。

芹沢はゆっくりと拳銃を下ろした。成瀬の思惑に気づいた。成瀬は下ろされた拳銃を目で追い、驚いた顔で芹沢を見つめた。

「あんたの目的は、これだったのか」

まずい、と思った。

「俺に自分を殺させることだったのか」

それ以上、言わないでくれ。

「罪を逃れた俺に、今度こそ人を殺した裁きを受けさせるために…自分の命を犠牲にしてまで」